道化師の夜

どうけしのよる|The Clowns' Evening|----

道化師の夜

レビューの数

9

平均評点

73.6(26人)

観たひと

39

観たいひと

11

基本情報▼ もっと見る▲ 閉じる

ジャンル ドラマ
製作国 スウェーデン
製作年 1953
公開年月日 1965/6/25
上映時間
製作会社 サンドリュー・フィルム
配給 東和=ATG
レイティング
カラー モノクロ/スタンダード
アスペクト比 スタンダード(1:1.37)
上映フォーマット
メディアタイプ
音声

スタッフ ▼ もっと見る▲ 閉じる

キャスト ▼ もっと見る▲ 閉じる

解説 ▼ もっと見る▲ 閉じる

「鏡の中にある如く」のイングマール・ベルイマンが脚本・監督したサーカスを舞台にした人間悲劇。撮影は「鏡の中にある如く」のスヴェン・ニクヴィストと「女たちの夢」のヒルディング・ブラド、音楽はカール・ビルゲル・ブロムダールが担当した。出演は「不良少女モニカ」のオーケ・グレンベルイ、「愛する」のハリエット・アンデルソン他。

あらすじ ▼ もっと見る▲ 閉じる

巡業サーカス団の座長アルベルト(オーケ・グレンベルイ)は若い女曲馬師アンナ(ハリエット・アンデルソン)を愛人として旅を続けているうちに、妻のアグダと二人の子供を残してきた町にたどりついた。寄る年波のことを考えると彼は平凡な家庭生活が恋しくなり、わが家を訪れてみたものの、妻の拒絶にあった。アルベルトが妻のもとを訪れたのを知ったアンナはやはり彼が妻のことが忘れられないのだと嫉妬し、以前、衣裳の借用交渉に出かけた劇団の若い俳優フランスの誘惑に身をまかせた。アンナがフランスと交渉をもったことを知ったアルベルトは、その夜サーカス見物に来た彼と決闘した。だが年老いたアルベルトは完全なる敗北を喫した。絶望のあまり、自殺を決意したものの決行するだけの勇気が彼にはなかった。気持を紛らすため、一座のアルマが可愛がっている老熊を射殺し、みじめな自分の姿に泣くのだった。翌朝、アルベルトとアンナは傷ついた者同士、慰めあうかのように寄り添い、濃い霧の中を次の巡業地へと旅立って行った。

キネマ旬報の記事 ▼ もっと見る▲ 閉じる

1965年8月上旬号

外国映画批評:道化師の夜

1965年7月下旬号

新作グラビア:道化師の夜

外国映画紹介:道化師の夜

2023/10/29

2023/10/30

80点

選択しない 


3人の想い

個人的に好きな作品とそうでない作品がはっきりしているベルイマン映画ですが、これはかなり好きな作品です。魔術的オカルト的なものは一切ない人間ドラマですが、サーカスの団長と愛人、元妻の関係を際立たせる演出と脚本が見事です。最初と終わりに見えるサーカス団の幌馬車の情景が特に素晴らしい。

2023/04/25

50点

選択しない 


小津安二郎の『浮草物語』を連想させる日・瑞の人生観の違い

 原題"Gycklarnas afton"で、邦題の意。
 年老いたサーカス団の座長(オーケ・グレンベルイ)が妻(アニカ・トレトウ)と息子のいる町に巡業で帰ってくる物語で、座長には若い曲馬師の愛人(ハリエット・アンデルソン)がいて、座長を引退して家に落ち着くかどうか、二人の間で迷うが、設定が小津安二郎の名作『浮草物語』(1934)を連想させる。
 小津版では旅芸人一座は解散し、座長と愛人は浮草としての再出発を思わせて終わるが、ベルイマン版ではサーカス団は残るものの座長は自殺してしまう。
 サーカス団の馬車の連なりを横からのロングショットでとらえる映像が印象的で、映像的にも凝っているが、浮草の生き方を消極的ながらも肯定する小津に対し、否定的に捉えるキリスト教的倫理観がベルイマンらしい。
 座長は妻の許しを乞うて浮草をやめようとするが、自立の道を歩んできた妻はきっぱり拒絶する。
 一方、曲馬師の愛人はそんな座長に不安を感じ、町で出会った劇団の看板俳優(ハッセ・エクマン)によろめく。
 それを知った座長は俳優と決闘することになるが、敗れて身も心もズタズタとなり、絶望して人生を清算するために引き金を引く。
 救いのある小津に対して、破滅的な結末が日本人と北欧人の人生観の違いを感じさせる。

2023/04/15

2023/04/15

72点

VOD/Amazonプライム・ビデオ 
字幕


ベルイマンにしては

分かりやすい映画だが
特有の寒々とした暗さ、あきらめたような救いようのなさは共通
……

2022/01/12

2022/01/13

90点

VOD/Amazonプライム・ビデオ 
字幕


地方巡業のサーカス団を舞台にした、男女の腐れ縁を描いたベルイマン監督作品。
一般的な有名作ではないが、音楽の効果的な使い方、あまりにも美しいカメラワークと映像芸術としてのクォリティの高さは相変わらずである。
物語は分かりやすいのでベルイマン入門作としては最適。将来映像作家を目指す若い人達のための教材として見る価値も高い。
俳優陣はサーカス団長役のオーケ・グレンベイルと、道化師役アンデルス・エクが実に味わい深い名演。そしてヒロイン役のハリエット・アンデルソンが、セミヌード・シーンで見せる脇毛がエロい。

2018/12/09

2019/05/17

75点

映画館/東京都/国立映画アーカイブ 
字幕


味わい深い読後感

国立映画アーカイブのスウェーデン映画特集「道化師の夜」は、わたくしが知る限り70年代には名画座に掛からなかったし、2000年以降も上映された記憶がないので、ベルイマンの中でもスクリーンで観られる機会は稀な映画で、そのせいかこの夜の国立映画アーカイブは満員の盛況で、根岸吉太郎氏もいらしていました。
「道化師の夜」は、1953年製作、「愛のレッスン」や「不良少女モニカ」と同じ頃の、ベルイマンの明るい恋愛映画、いわゆる“夏の映画群”の頃ですが、中年から老いの時期に差し掛かったサーカス団長の悪足掻きと諦念というビターな主題を扱っているものの、神にすがる場面はないので、“冬の映画”以前の作品群に属することは明らかでしょう。
とにかく実に渋い映画で、ベルイマン映画らしい観どころのある、味わい深い読後感をもたらす映画だったことは間違いありません。

2018/12/09

2018/12/09

90点

映画館/東京都/国立映画アーカイブ 
字幕


サーカス一座を描いたベルイマン監督作品

イングマール・ベルイマン監督の未見作品を観たのは、本当に久しぶり。今年(2018年)はベルイマン生誕100年だったので、レア作品含めての特集上映を期待していたが、全く開催されず、本日この『道化師の夜』を観たのも、京橋・国立映画アーカイブで開催中の「スウェーデン映画特集上映」の1本として…。ベルイマン生誕100年なのに、残念な年であった。

この作品、不思議な雰囲気の映画であった。
スヴェン・ニクヴィストが、ベルイマン監督作品で初めて撮影監督した作品でもあり、この2人の出会いは、この作品以降の多数の名作に影響を与えることになる。

冒頭、あの『第七の封印』の死神たちのラストシーンに似た角度で、下から見上げる構図で馬車の列が描かれる。
馬車の中で寝ている若い女性(ハリエット・アンデション)は、この馬車列のサーカス一座の座長アルベルト(オーケ・グレンベルイ)の愛人である。座長は妻と子供を残して、家を出たのだ。

馬車の中で寝ていた座長が馬車の外に出て座ると、昔サーカスの道化師の妻が軍人たちと海で全裸で泳ぎ、それを止めさせた道化師の男が絶命したという話が描かれる。

サーカス一座が町に着くと凄い雨が降ってくる。テント越しに雨漏り。この一座はだいぶ金欠なことも判って来る。
団長アルベルトは、ひとつの夢を頼りに生きぬいてきたのだ。それは、アメリカではサーカスは尊敬されているということ。
ただ、それは現実的には難しかった。一座はパレードをするが、警官に止められてしまう。
仕方なく、他の劇場に衣装などを借りに行く。

そんなこんな出来事があり、アルベルトは妻と子供の元へ行き、「一緒に住まないか?一座には疲れた」とこぼすのだが…。
また、アルベルトの愛人は、劇場の女好きの男に眼を付けられて、肉体関係を…
といった様々な出来事を経て、終盤、盛り上がりを見せる。

なかなか見応えのあるイングマール・ベルイマン監督作品であった。
こうした作品が、未ソフト化(VHS、DVD等)であるのは非常に勿体ないと思う。