大戦末期の捕虜収容所にトランクに隠されて連れてこられた幼児を巡って捕虜とナチスが生き残りを賭けて頭脳戦を展開していく戦争映画。見つかれば即処刑という状況下で収容所内を転々とかくまわれていく子供が何とも愛くるしい。
注目すべきはこの子供をナチス側の将校が保身に利用した点。戦況が怪しくなっていた時期であるから、もしドイツが負けた時に捕虜の子供を助けてやった事実があれば情状酌量になるのではという浅ましい考えがあったのである。
色々な価値観の渦巻く収容所において全員の捕虜が子供の命を守ろうと団結する。拷問に耐える者、牛乳を調達して来る者、医務室のゴミ箱に子供を隠すアイデアを提供する者、この団結力は見事であった。最後は連合軍の侵攻の前にナチスは退却、その直前に捕虜たちは捨て身の抵抗を見せるのだが、ここで登場した多数の武器をどのように調達したのか、そこは大いに疑問が残った。当然収容所の至る所に隠していたのであるがその量たるや半端ではなかった。
自由を喜ぶ老人と少年。二人は手を取り合って小躍りするのだが、やがて子供が泣きじゃくる。それに気づいた捕虜のリーダーが近づくと傍に老人が冷たくなって倒れていた・・・。これは足を滑らせて頭を打ったという設定なのだろうが、この場面で老人を死なせる必然性はどこにもない。子供の命が救われてハッピーエンド、それだけで良かったと思う。解放された囚人たちが一気に外へと駆け出すラストシーンの群衆の中にあの老人にも居て欲しかった。