裸で狼の群のなかに

はだかでおおかみのむれのなかに|Nackt under Wolfen|Nackt under Wolfen

裸で狼の群のなかに

レビューの数

3

平均評点

62.7(6人)

観たひと

9

観たいひと

1

基本情報▼ もっと見る▲ 閉じる

ジャンル ドラマ
製作国 東ドイツ
製作年 1963
公開年月日 1964/4/14
上映時間 116分
製作会社 デファ・フィルム(ロタークライス・プロ)
配給 共同映画=フェニックス・フィルム
レイティング 一般映画
カラー モノクロ/スタンダード
アスペクト比 スタンダード(1:1.37)
上映フォーマット 35mm
メディアタイプ フィルム
音声 モノラル

スタッフ ▼ もっと見る▲ 閉じる

キャスト ▼ もっと見る▲ 閉じる

解説 ▼ もっと見る▲ 閉じる

ドイツのブーヘンワルト収容所にいたブルーノ・アーピッツの原作を自ら脚色、フランクバイヤーの監督した戦時ヒューマニズムドラマ。撮影はギュンター・マルチンコウスキー、音楽はウイリー・シェーファーが担当した。出演者はE・ゲションネック、アーミン・ミューラー・スタール、クリスティン・ヴォイチク、フレート・デルマーレ、ヴィクトル・アブジュシコ、ゲリー・ヴォルフ、B・プロトニツキー、ブルーノ・アーピッツ、J・シュトラウフなど。一九六三年度モスクワ映画祭最優秀監督賞を受賞している。

あらすじ ▼ もっと見る▲ 閉じる

一九四五年。ブーヘンワルト強制収容所は、独軍敗色の報に、解放の希望と虐殺の不安に焦慮していた。きょうもアウシュビッツから一団の囚人達が移送された。その中のヤンコウスキー(B・プロトニッキー)は古ぼけたトランクを大切そうに持っていた。驚いたことにその中には男の子(J・シュトラウフ)がうずくまっているのだ。SS(ナチス親衛隊)に見つかればすぐ殺されてしまう。その夜少数の囚人達によって子供は秘かに私物倉庫に隠された。だがナチスの監督官に見つかり、子供は別の所に隠された。ナチスはこれを機に一挙に囚人の抵抗組織を掃討しようと捕虜の二人を拷問するが、口を割らない。一方、抵抗組織の軍事委員会はひそかに武器を入手しながら蜂起の機を窺っていたが、ついに追求の手はその中の一人ピッピヒ(フレート・デルマーレ)に及び彼は惨殺された。緊迫した情況の下に子供をかくまうことがどんなに危険なことか。ナチスに具体的な証拠を握られれば、すべてが水泡に帰すことをよく理解していたし、救われる可能性のある人の命さえ危い。だが、囚人達は子供を守ることを決意した。子供はSSの執拗な捜索を逃れて所内を転々と匿まわれた。絶え間ない拷問にも口を割らない捕虜、追撃の連合軍と、SSの苦悩と焦慮は最早頂点に達していた。「皆殺しだ!」誰も微動だにしない。子供を守る連帯の力だ。次の瞬間、武器を手に手に持った各グループの囚人達の起ち上った喚声が湧く。長年欝積した憤怒は激しい突撃に変り、収容所は占領され、すすり泣きに混った歓声が衛門へ衛門へ、と殺到した。まぶしい太陽。「苦労させやがったな、このガキ--」嬉しい述懐であった。

キネマ旬報の記事 ▼ もっと見る▲ 閉じる

1964年4月上旬春の特別号

外国映画紹介:裸で狼の群のなかに

2019/10/05

2019/10/06

70点

映画館/大阪府/シネヌーヴォ 


運び込まれた子供。

ネタバレ

の上映作品。

終戦も近い頃のドイツの強制収容所が舞台。アウシュビッツから移送されてきた囚人が持ってきた大きなトランクの中には何と子供が隠されていた。今日の自分の命もしれない囚人たちの多くは、その小さな命を守りたいという気持ちで連帯するが、中にはそう思わないものや、子供の存在を知りソ連か連合国の兵士に囚われた時の保険にしようと思うドイツ人将校なども現れる。

遂に収容所で囚人たちの反乱の火蓋が切られ、隠し持っていた武器を手に大人数の囚人たちがドイツ兵を攻撃するクライマックスは迫力がある。実際に収容所に収監されていた人物による小説の映画化であり、まだ施設も人も残っている時代の製作ということもあってリアリティも十分。ただし社会主義国故の、現体制の視点から見た歴史観には多少の割引を持って見る必要もありそうだ。

2017/04/02

2017/04/02

70点

その他/福岡市総合図書館 
字幕


誰かの子供から皆の子供へ

大戦末期の捕虜収容所にトランクに隠されて連れてこられた幼児を巡って捕虜とナチスが生き残りを賭けて頭脳戦を展開していく戦争映画。見つかれば即処刑という状況下で収容所内を転々とかくまわれていく子供が何とも愛くるしい。

注目すべきはこの子供をナチス側の将校が保身に利用した点。戦況が怪しくなっていた時期であるから、もしドイツが負けた時に捕虜の子供を助けてやった事実があれば情状酌量になるのではという浅ましい考えがあったのである。

色々な価値観の渦巻く収容所において全員の捕虜が子供の命を守ろうと団結する。拷問に耐える者、牛乳を調達して来る者、医務室のゴミ箱に子供を隠すアイデアを提供する者、この団結力は見事であった。最後は連合軍の侵攻の前にナチスは退却、その直前に捕虜たちは捨て身の抵抗を見せるのだが、ここで登場した多数の武器をどのように調達したのか、そこは大いに疑問が残った。当然収容所の至る所に隠していたのであるがその量たるや半端ではなかった。

自由を喜ぶ老人と少年。二人は手を取り合って小躍りするのだが、やがて子供が泣きじゃくる。それに気づいた捕虜のリーダーが近づくと傍に老人が冷たくなって倒れていた・・・。これは足を滑らせて頭を打ったという設定なのだろうが、この場面で老人を死なせる必然性はどこにもない。子供の命が救われてハッピーエンド、それだけで良かったと思う。解放された囚人たちが一気に外へと駆け出すラストシーンの群衆の中にあの老人にも居て欲しかった。

2016/12/01

2016/12/01

60点

映画館/東京都/東京国立近代美術館 フィルムセンター 
字幕


子はカスガイ

大戦末期、連合軍の反攻の迫る強制収容所、送り込まれた囚人の中に隠されてユダヤ人の子供がいた。
とんだお荷物を背負わされた形の捕虜たちと、敗走する時の人質に使えると目論むドイツ高官と、思惑に対応が揺れ、厳格処断に固執するSS尉官の頑なさに、生命の危機がそれぞれに訪れようとする。
当時は東欧政治圏にあった東ドイツは戦中はナチを構成していた筈であるが、戦後社会主義国家になったことから、反ナチの急先鋒としてプロパガンダに加わった変節の速さは、保身の為とは言え、政治の力は戦争に勝るものと改めて知らされる。

ラストにおける、連合軍の攻勢に蜂起する囚人のパワーは、いかにも社会主義国らしく、数百人に及ぶ人員の動員が当然のように繰り広げられ、それなりの感動をよぶ。
実話に基づいたブーフェンヴァルト収容所を実際に使用し、捕虜経験者も多数参加したとの事で、変に気を回さなければ、資料的価値もあると思われ、集団人間ドラマとしての完成度も高い。