前半は温かい人間ドラマだが定番の戦争悲劇の後半がつまらない
原題"Era Notte a Roma"で、邦題の意。
1943年のイタリア降伏後が舞台で、北部の捕虜収容所を脱走した連合国兵士3人が、無防備都市宣言下のローマ、ポンテ地区の家を隠れ家に連合軍の救出を待つという物語。
隠れ家を提供するのはヤミ屋の娘エスペリア(ジョバンナ・ラッリ)で、農家から小麦や食用油を手に入れるのと交換に兵士3人を預かるが、ローマを占拠するドイツ軍に知れれば銃殺と知って3人を追い出しにかかる。
ところが婚約者のレナート(レナート・サルヴァトーリ)はレジスタンスの協力者で、3人をクリスマスまで預かり、別の隠れ家に移送しようとする。
3人はイギリス兵(レオ・ゲン)、アメリカ兵(ピーター・ボールドウィン)、ロシア兵(セルゲイ・ボンダルチュク)で、言葉の通じない5人が必死に意志を交わそうとする姿が可笑しいが、同時に友情を深めていき、別れの日には離れがたい気持ちになっているのが本作最大の見せ場。立場や国、人種こそ違っても互いに理解し合えるという普遍的人間愛が温かい気持ちにさせる。
もっとも感動的なのはここまでで、ドイツ軍に見つかって追われる展開になると、レジスタンスが逮捕され、ロシア兵が死に、レナートが殺されるという定番の悲劇となり、イギリス兵とエスペリアが密告者の元司祭への復讐を果たす中、連合軍のローマ入城でfinとなる。
中盤までは、打算的だが人の好いイタリア人ばかりだったのが、密告者の元司祭だとか、エスペリアがレナートを助けるためにドイツ軍に協力したとか、急に戦争下での人間の醜さに焦点が移り、普通の戦争映画になってしまう。語り部であるイギリス兵が、逃げ回るだけの受け身で観察者でしかないのが、とりわけ後半をつまらなくしている。
イタリア人は風向き次第でファシストにも反ファシストにもなると言いながら、カトリックだから本質は善良で、教会はレジスタンスを匿う神の代理と、妙にカトリック教会寄りなのが鼻につく。
ロシア兵を演じるセルゲイ・ボンダルチュクは『戦争と平和』(1965~7)の監督。(キネ旬8位)