アラン=ドロンの代表作。思わず声を上げてしまうラストシーンの怖いことといったら!
冒頭のカフェでトムとフィリップの関係、フィリップがトムを便利屋のように使っていること、トムはフィリップの署名の偽造ができること、恋人マルジュを置いてイタリアに遊びに来ていて、知り合いはフレディしかいないこと、などが短いシーンの中で要領よく説明されます。その後、盲人をからかったり、バレエ教室を邪魔したりと、放蕩の限りをつくすフィリップと、トムに対して傍若無人にふるまうフィリップの様子が丹念に描かれます。こういう、トムに殺意が芽生える過程をじっくり描くことで、ストーリーにリアリティが加わってますね。とくに、小船に乗せて海に放り出す仕打ちは苛めそのもので、真っ赤に火傷したトムの背中を見れば、誰しも「これはひどい」と思わずにはいられないでしょう(^^;)
船上でフィリップを殺害し、異国であることをいいことにフィリップになりすますトム。パスポートの写真を張替え、サインもそっくりに書けるよう練習するなど、なかなかの知能犯ぶりです(^^;)
偶然、フィリップの知り合いとホテルの電話交換台ですれ違ったり、フレディが部屋を訪ねてきて、フィリップの服や靴を身につけているトムに不審の目をむけるあたりは見ていてハラハラドキドキ(^^;)
船のスクリューにからまったロープの先から、海に沈めたと思っていたフィリップの死体があがってくるラストシーンはまさに大どんでん返しといえる鮮やかなもので、ぐるぐるまきにされた中から手だけが見えているのが本当に怖いです(^^;)
よく考えられたストーリーだなあと思ったら、パトリシア=ハイスミスの原作でした。納得(^^;)それから、ニーノ=ロータの物悲しいメロディが繰り返し変奏されて効果的に使われています。それから、魚市場をうろつくシーンで、エイの顔がアップになった場面が妙に印象に残りました。