10回目の鑑賞を、スタジオ・カナルの4Kレストア版=BS4Kで。
ここはスタジオ・カナルではなく、クライテリオン社でやって貰いたかった、そんな鑑賞後の印象だった。
今回の感想は、《殺人者は孤独だ》。
トムは殺しが実行された後、トム・リプレイとフィリップ・グリーンリーフの両方を演じ続ける。
トム・リプレイである時も、嘘で固められたトムを演じているわけで、もう彼の主体性はどこにもないような気がした。
トムがマルジュを手にしたのも、フィリップの金を手にする手段としてと考えると、彼は本当に彼女を愛しているのだろうかと訝しんでしまう。
殺しのシーン以後は、ドキュメンタリー・タッチが多くなる。
ヨット上では、荒波・風にバタバタとはためく帆、鐘の音が強調される。
魚市場でのシーン、
祭のシーン、
その他、深読み出来るモンタージュがたくさんある。
魚市場のシーンでは、ドロンは店員にウインクする。
すっかりセレブの気分。
後半は、完全犯罪を完成させる為の男を淡々と演じ続けるようにさえ見えた今日のアラン・ドロンであった。
幾つかのシーンでは眼光鋭いのだが、ボーッと虚無的な顔をしてるシーンも多い。
当然、演技指導だとは思うのだが。
フィリップにおべっかを使ってるトムの方が、笑顔を含めいろいろなドロンの表情を見れる。
マルジュとフィリップは婚約状態であったことが、後半、はっきりする。
ヨットの名前は《マルジュ》であった。
オープニング・デザインは、またまた「シャレード」「007」のモーリス・ビンダー。
60年代のオープニングは楽しい。