青い海とカラッと晴れた青い空の解放的な美しさと対照的なアラン・ドロンのモーリス・ロネへの屈折した憧憬、そして衝動的な殺人と隠蔽、ロネに成り変わるべく行われる部屋にこもってのサインの練習などが描かれ、否が応でもドラマに引き込まれる。サスペンスとしても破滅型の青春映画としてもルネ・クレマン監督の傑作。
殺人犯であるドロンに感情移入し完全犯罪を期待する自分がいる。もちろん、そう思わせるドラマ作りをしているのだが、さらにドロンの魅力によるところも大きい。なんと言うが独特な魔性の魅力を感じる。だからドンデン返しのラストにドロンの哀れを感じて胸が苦しくなる。そこに流れるテーマ曲のなんと切ないことか。かつて映画音楽全集レコードの定番でした。