灰とダイヤモンド

はいとだいやもんど|Ashes and Diamonds Popiot I Diament|Ashes and Diamonds Popiot I Diament

灰とダイヤモンド

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レビューの数

61

平均評点

76.1(269人)

観たひと

386

観たいひと

41

基本情報▼ もっと見る▲ 閉じる

ジャンル ドラマ
製作国 ポーランド
製作年 1958
公開年月日 1959/7/7
上映時間 103分
製作会社 国立映画カドルプロ
配給 NCC
レイティング
カラー
アスペクト比
上映フォーマット
メディアタイプ
音声

スタッフ ▼ もっと見る▲ 閉じる

キャスト ▼ もっと見る▲ 閉じる

解説 ▼ もっと見る▲ 閉じる

「地下水道」のアンジェイ・ワイダが監督したポーランド映画。ドイツ降服直後のポーランドを背景とする、ロンドン派の抵抗組織に属した一人の青年の物語である。イェジー・アンジェイエフスキーの原作を、アンジェイエフスキー自身とワイダが脚色にあたり、撮影はイェジー・ウォイチック。音楽はフィリップ・ノワック指揮のウロツラウ放送五重奏団。出演するのはズビグニエフ・チブルスキー、エヴァ・クジイジェフスカ、アダム・パウリコフスキー、ボグミール・コビェラ、スタニスラフ・ミルスキー、ズビグニェフ・スコフロニュスキー等。

あらすじ ▼ もっと見る▲ 閉じる

1945年5月8日、ポーランドの地方都市。街のはずれの教会のそばに、二人の男が待ち伏せていた。党地区委員長シュチューカを殺すためだ。見張りが車の接近を叫んだ。銃撃。車の男達は惨殺された。しかしそれは人違いで、シュチューカの車は遅れて着いた。《こんな殺人がいつまで続くのか》通りがかりの労働者達は彼に詰問した。--夕方、街の放送塔がドイツの降伏を告げた。市長主催の戦勝祝賀会のあるホテルで、殺人者達は落ち合う。見張りの男は市長秘書だった。二人の男、アンジェイ(アダム・パウリコフスキー)と若いマチェク(ズビグニエフ・チブルスキー)がそのホテルへやって来た。彼等はロンドン派の抵抗組織へ入り、独軍と戦った。解放後は市長やワーガ少佐の指令で反党地下運動に従う。シュチューカが部下とホテルに現れ、マチェクは始めて誤殺に気づく。彼はシュチューカの隣りに部屋をとった。向かいの家には誤殺した男の許婚と思われる女がいた。ホテルのバーには美しい給仕クリスティーナ(エヴァ・クジイジェフスカ)がいた。アンジェイは少佐に呼ばれ、暗殺の強行を命ぜられる。ソビエトから帰国早々のシュチューカは息子が心配で、死んだ妻の姉を訪ねる。そこにはワーガ少佐が隠れ住んでいた。引取られた息子はワルシャワ蜂起以後、生死不明だった。一方、ホテルのホールでは歌が始まり、誰もいないバーでマチェクとアンジェイはグラスの酒に火をつけ、死んだ仲間を悼んだ。アンジェイは朝四時に任務でワルシャワへ発つ。《それまでに殺す。連れてってくれ》マチェクはアンジェイと約束した。彼はクリスティーナに《今晩十時、部屋で待つ》と誘うが相手にされない。市長秘書は酒飲みの新聞記者の老人にささやかれた、《市長が新政府の大臣になる》出世の機会だ。ついつい老人と盃を重ねてしまう。宴会場には市長も到着した。そんな時マチェクの部屋の戸が叩かれた。クリスティーナだ。《貴方なら後腐れがないから来たの》女は話す、両親は戦争中死んだと。市長秘書は泥酔し、老記者を連れ宴会場へ押入った。マチェクは女と時を過す。いつしか二人は愛し合っていた。マチェクはいつも離さぬ黒眼鏡のことを話す。ワルシャワの地下水道にいたのだ。二人は外へ出る。雨が降りだし、教会の廃墟に雨宿りした。女は墓碑銘を読む。《……君は知らぬ、燃え尽きた灰の底に、ダイヤモンドがひそむことを……》ノルヴィッドの詩だ。マチェクは強く望む。普通の生活がしたい!死体置場には今日殺した二人の死体があった--。保安隊が反党派の残党を捕えた。その中の不敵な少年はシュチューカの息子だった。マチェクはホテルの裏で女と別れるが、アンジェイを見かけ、思わず便所へ隠れた。《裏切って女と逃げるのか》アンジェイはいう《そんなら俺がやる》--マチェクはシチューカ暗殺を引受けてしまう。宴会場では市長秘書が消火器の液をまき散らし市長から見放された。マチェクは息子に会いに行くシュチューカの後をつける。ふりむきざま、乱射した。相手の体がマチェクに覆いかぶさってきたその時、祝賀花火が一斉に揚った。--夜明け、マチェクは荷物をまとめ、クリスティーナに別れを告げた。《行ってしまうの?》宴会の流れはまだ続いている。マチェクは同志の出発を物陰で見た。アンジェイからも見放された市長秘書が、マチェクにすがろうとする。逃げるマチェクは保安隊にぶつかった。追われ、撃たれた。ホテルでは市長や伯爵や大佐夫人達が亡霊のようにポロネーズを踊っていた。クリスティーナは立ちつくしている、涙を流して。マチェクはいつか町はずれのゴミ捨場を獣のようにうめき、笑いながら、よろめきはっていた。ボロ屑の中で、最後のケイレンがくる。汽車の響きが遠ざかった。

キネマ旬報の記事 ▼ もっと見る▲ 閉じる

2016年12月下旬号

アンジェイ・ワイダ 祖国と連帯した男:危機的状況と作家精神――ポーランド映画「灰とダイヤモンド」をどう受けとめたか

2015年7月下旬号

終戦70年 後世に伝えたい戦争映画:巨匠が伝える映画「独裁者」「灰とダイヤモンド」「シンドラーのリスト」

2009年12月下旬号

「カティンの森」:「灰とダイヤモンド」から「カティンの森」へ

1959年8月下旬号

外国映画批評:灰とダイヤモンド

1959年7月下旬号

外国映画紹介:灰とダイヤモンド

1959年7月上旬夏の特別号

新作グラビア:灰とダイヤモンド

座談会 危機的状況と作家精神:「灰とダイヤモンド」をどう受けとめたか 井上光晴×武井昭夫×堀川弘通×武田泰淳

2023/08/18

2023/08/18

80点

選択しない 


あ、マチェック

この映画で「マチェック」という言葉が大きな意味を与え、一時、そんな名前の喫茶店やお店があちこちにありました。初めて観た時には暗殺後の花火に切なくも不思議な感動がありました。そしてゴミの中を彷徨い死んでいくマチェックの姿は映画史上の名場面に。主演のズビグニエフ・チブルスキーはこの映画の8年後マチェックを追いかけるように事故死したのが痛々しい。

2022/11/30

2022/12/30

70点

VOD/Amazonプライム・ビデオ/レンタル 
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再見、抵抗三部作の3作目。1945年5月、ドイツ降伏直後のポーランド。対外的な戦争は終わっても、国内の政治的な諍いは治まらない。そして、若くして抵抗組織に入り、戦後も地下運動を続けるマチェク。その境遇を甘んじて受けていることで、いかに彼の青春が抵抗運動に注がれていたかが分かる。が、彼はホテルのバーの給仕・クリスティーナに恋をする。初めて心から普通の生活を望むものの、それが許されない現実。ラストのマチェクが印象的で、町外れのゴミ置き場で生涯を終える姿が遣る瀬無い限り。また、まるで現実から逃避するかのように、朝になっても踊り続ける戦勝祝賀会の参加者も怖い。市長の秘書の醜態には笑ってしまったけれど、あんなに自制を無くすほどに普段は抑圧されているのかな、とも思った。逆さ吊りのキリスト等、記憶に残るシーンが多め。

2022/12/15

2022/12/15

100点

レンタル/東京都 
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アンジェイ・ワイダ監督「抵抗三部作」の第3作目

初見は高田馬場ACTミニシアター(1980年11月27日)、42年ぶりに鑑賞。
アンジェイ・ワイダ監督「抵抗3部作」の第3作目🎥

1945年5月、ドイツ降伏直後のポーランド地方都市で抵抗組織の一人の若者が「戦いか安泰か」の迷いに苦悩する姿を描いた傑作!

仲間と共にマチェク(ズビグニエフ・チブルスキー)は銃を持って、誰かの車が通るのを待ち伏せしていた。そして、やって来た車に乗った男たちを射殺するところから始まる。
彼等が狙ったのはシュチューカ委員長なる人物だったが、間違って労働者を射殺してしまった。そのため、市長主催の戦勝パーティに来るシュチューカ委員長を殺すため、パーティ会場のホテルに部屋をとるマチェク。
そんな状況でマチェクはバーの美人給仕クリスティーナ(エヴァ・クジイジェフスカ)に声をかけ、クリスティーナは「恋愛ざたは別れがつらいからイヤだ…」と言いながらも、二人は愛し合う。
マチェクは、「一兵士として任務を全うするか?」or「クリスティーナと一緒に平和な暮らしをするか?」の選択に苦悩するのだが……。

マチェクとクリスティーナが屋外で会話する場面は、この映画を紹介する記事に良く使われるが、二人の間に「逆さづりのキリスト像」が映されており、これが鮮烈なメッセージ性を持った構図。

アンジェイ・ワイダ監督の大傑作!

2022/10/14

2022/10/16

87点

VOD/Amazonプライム・ビデオ/レンタル/テレビ 


魂の叫び

第二次世界大戦後のソ連共産党統治下の政府と自由主義陣営の反乱組織に引き裂かれたポーランドを舞台に、その青春を反乱テロに捧げた青年の苦悩を描いた傑作。心許した女性の前でのみサングラスを外すが、後はずっとそのサングラス越しに世の中を見ているのが、この青年の苦悩や屈折を表現している。

2021/04/06

2021/04/06

85点

VOD/Amazonプライム・ビデオ 
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青春映画の傑作

スタイリッシュな映像で紡がれる青春の破滅。

ドイツ降服直後、混迷極めるポーランド。軽薄に見えてピュアなマルチェク。抵抗組織の一員として銃を取る。クリスティーナとの運命的な出逢い。雨の中、ふたりと行き交う軍靴の音。時代背景が切なさを増す。犯した罪への懊悩。時代はふたりに背を向け、自由への逃避行は叶わずマルチェクはゴミ捨場に息絶えた。

平和な時代なら笑って生きられただろうか。それとも同じ破滅の道を辿っただろうか。誰が悪い訳でもない。もう一度、違う時代に生まれてクリスティーナと幸せになって欲しい。

政治的メッセージを抜きにしても、時代を超えて胸を打つ青春映画の傑作。

2021/03/15

2021/03/15

80点

その他/みなと図書館 
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引き裂かれる祖国と青春の挫折

ネタバレ

 ポーランドの歴史を考えると、何とも言えない、底知れぬ凄さがある。

 ドイツに侵略され、ソ連赤軍の裏切りもあってワルシャワ蜂起を鎮圧され、戦争が終わっても、ソ連共産党とロンドン亡命政府に引き裂かれ、他国に翻弄され続けたポーランドの歴史を背景にしている。

 マチェク(ズビグニエフ・チブルスキー)が、虚無的になりながらも、要人の暗殺か、恋愛に生きるのか迷いながら、遂には死んでいく。彼の姿が切なく、でもそう生きざるを得なかったのが何とも悲しく、強烈だった。

 クリスティーナ(エヴァ・クジイジェフスカ)との関係も、彼女は両親を戦争で失っており、退廃的な感じで、青春の夢と挫折が重なっていく。

 随分前に観て、今回図書館からやっと借りてまた観ることが出来た。あまり覚えていなかったのだけれど、アンジェイ・ワイダの作品の中では代表作と思う。