脚本のダルトン・トランボは、ハリウッドの赤狩りで友の名を売らなかった自身の人生を重ね合わせている。だからこそ、我々観客は打ち震えるのだ。
ネタバレ
パピヨン
映画狂としては、恥ずべきことなのだけれど、この傑作より、2017年のリメイク版を先にみることになってしまった。まず、1973年版のスティーブ・マックイーン、ダスティン・ホフマンの2大スターの競演による大作感が圧倒的(ギャラも凄かったらしい)。冒頭のCGのない時代のモブシーンから、どっぷりとその世界に引き込まれる(その割には、タイトルがあっさり目なのがいい)。
フランス領ギニアの監獄はまさに人間の捨て場所であり、犯罪者の更生なんてものは皆無で、個の破壊を目指している。その過酷な描写は言葉を失う(自分が公務員のせいか、犯罪者はともかく、看守等でこんなところに行かされる者が気になっていた)。特に、パピヨンが送られる独居房の光を奪われ、生きるためには虫さえ食べなければならない過酷さは気が遠くなりそうだ。こんな信じがたい状況でも、パピヨンは脱獄への希望を失わず、助けてくれた相棒のドガの名を吐くこともない(生命の危機の中で口にしてしまいそうなシーンがあることがいい)。パピヨンを演じたスティーブ・マックイーンは「大脱走」に繋がる彼自身を感じさせる見事な演技をみせてくれる。
また、この熱い男を脚本のダルトン・トランボは、ハリウッドの赤狩りで友の名を売らなかった自身の人生を重ね合わせている。だからこそ、我々観客は打ち震えるのだ。そうした熱さとともに、トランボの作劇の上手さが光る。実は、原作には、ドガは存在せず、彼が生み出したキャラで、二人の友情がこの作品の感動係数を飛躍的に上げている。それに応えたドガ役のダスティン・ホフマンの演技もさすがである。
こうした2大スターのがっぷりの競演、トランポの熱い脚本、ジェリー・ゴールドスミスの音楽、そして忘れてはならないのが、この大作をまとめ上げるフランクリン・J・シャフナー(「猿の惑星」「パットン大戦車軍団」)の手腕、そのすべてが相まって、こうした傑作が出来上がったのだ。
フランス資本で撮られたハリウッド映画という背景が邪魔したのか、アカデミー賞には無視されたようだが、映画史に残る傑作である。繰り返すが、リメイク版を先に見ることになったことが、情けなくてたまらない。