旅芸人の記録

たびげいにんのきろく|O Thiassos|----

旅芸人の記録

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レビューの数

30

平均評点

83.2(154人)

観たひと

240

観たいひと

78

基本情報▼ もっと見る▲ 閉じる

ジャンル ドラマ
製作国 ギリシャ
製作年 1975
公開年月日 1979/8/11
上映時間 232分
製作会社 ヨルゴス・パパリオス・プロ
配給 フランス映画社
レイティング
カラー カラー/スタンダード
アスペクト比 スタンダード(1:1.37)
上映フォーマット
メディアタイプ
音声

スタッフ ▼ もっと見る▲ 閉じる

キャスト ▼ もっと見る▲ 閉じる

解説 ▼ もっと見る▲ 閉じる

1939年から1952年までの14年間のギリシャの圧制、占領、反乱の歴史を背景に、全土を巡業する、ある旅芸人一座の波乱に満ちた生きざまを描く。製作はヨルゴス・パパリオス、監督・脚本はテオ・アンゲロプロス、撮影はヨルゴス・アルヴァニティス、音楽はルキアノス・キライドニス、編集はタキス・ダヴロプロスとヨルゴス・トリアンダフィルー、美術はヨルゴス・パッツァスが各々担当。出演はエヴァ・コタマニドゥ、ペトロス・ザルカディス、ストラトス・パキス、アリキ・ヨルグリ、マリア・ヴァシリウ、・ヨルゴス・クティリス、キリアコス・カトリヴァノス、グリゴリス・エヴァンゲラトス、アレコス・ブビス、ニナ・パパザフィロプル、ヤニス・フィリオス、ヴァンゲリス・カザンなど。

あらすじ ▼ もっと見る▲ 閉じる

1952年の秋、ギリシャ南部のペロポネソス半島の北端の町エギオンに、疲れはてた12名前後の旅芸人一座がおりたった。町は大統領選挙を数日後にひかえており、選挙カーが慌ただしく通りすぎる。“パパゴス元帥に投票せよ!”。同じエギオンの町、1939年の晩秋、11人の旅芸人一座。座長のアガメムノン(ストラトス・パキス)、母クリュタイムネストラ(アリキ・ヨルグリ)、長女エレクトラ(エヴァ・コタマニドゥ)、次女のクリュソテミ(マリア・ヴァシリウ)とその幼い子供の5人の一家に、先頭をゆくピュラデス(キリアコス・カトリヴァノス)、詩人と呼ばれる青年(グリゴリス・エヴァンゲラトス)、老男優(アレコス・ブビス)、アコーデオン奏きの老人(ヤニス・フィリオス)、アイギストス(ヴァンゲリス・カザン)らだ。一行のそばを通りすぎていく男が明日の午後、ドイツ第3帝国情報相ゲッベルス閣下が、オリンポス見物の途次、エギオンを通過すると告げた。公演場所の講堂で憩う一座。表の広場では極右ファランギの青年兵士たちが“父よ、世界はなぜかくも美しい”を歌い、ピュラデスは“おまえはいつか悔いて戻ってくる”を歌う。一座の出しものは「ロミオとジュリエット」風の恋愛を描く「羊飼いの少女ゴルフォ」。エレクトラがゴルフォ役を母から受けつぎ、弟オレステス(ペトロス・ザルカディス)が恋人タソス役を父から受けついだが、兵役にとられた彼に代ってピュラデスがタソス役やることになった。その夜、エレクトラは、母クリュタイムネストラとアイギストスの密通を目撃してうちひしがれる。夜明け、思いがけずに特別休暇をとって帰ってきたオレステスと舞台の役名で挨拶を交わす姉弟。しかし、舞台の幕があくと、秘密警察の男たちが来て、ピュラデスが捕えられたため、公演は中断した。 1940年10月28日、一座が降りたった駅では、町の人々が行進して歌を歌い、民家にはギリシャ国旗が翻っていた。が、まもなく空襲がはじまり、アガメムノンは補充兵として去り、母の室にはアイギストスが入ってきた。41年の正月頃、街なかでファランギの下士官に暴行されそうになったエレクトラが危いところを逃げ去った。その年の4月、ギリシャ全土が独軍に占領された。42年の初冬、英国が送りこんだ救援軍兵士とギリシャのゲリラ兵を追及する占領独軍が旅芸人たちの宿舎を襲い、アイギストスの密告で、オレステスがゲリラに加わっている事がわかり、代りにアガメムノンが銃殺された。座長になったアイギストスに皆は黙ってついていくが老男優だけが出ていった。1943年頃、独軍占領がながびく中、ある日エレクトラは、脱獄に成功してゲリラになっていたピュラデスに再会。彼はオレステスと合流するところだった。一座がバスで旅を続けていた時、他の市民と一緒に独軍に捕まり全員が射殺されそうになる。が、その時襲撃してきたゲリラ軍によって助かった。こうして、独軍の勢力は衰退し、 44年の秋独軍は徹退した。国民統一政府の成立を祝して、人民歌で行進する国民解放戦線の長い行進が続く。45年の正月、一座が山岳地帯での巡業に入ったある日、エレクトラは、オレステス、ピュラデス、詩人と再会し劇場に戻った。オレステスは、舞台上で母とアイギストスを射殺した。その夜、母のレコードを聞いて思いにふけるエレクトラが、仮面をつけた秘密警察の男たちに強姦された。45年12月に結ばれたヴァルキザ協定により、ゲリラは新政府に協力することを余儀なくされ、山にこもり続けるゲリラは重犯罪人とみなされた。49年の春、英軍のジープが、ゲリラの首をさらして村をゆく。そのあとにつづく捕えられた最後のゲリラたちの中にオレステスがいる。 50年、反共宣誓書にサインして釈放されたピュラデスに再会するエレクトラ。その年の暮に再会した詩人は、なかば廃人となっていた。51年、エレクトラは、ようやくオレステスと面会するが、それはすでに処刑された彼の死体との面会だった。オレステスの葬式で、遺骸が土にうずめられようとする時、思わずエレクトラが拍手を送った。そして、それに合わせて拍手に送る一座の人々。詩人は無言で空をあおいだ。52年の晩秋の夕べ。その夜は、クリュソテミの息子(ヨルゴス・クティリス)の初舞台で、彼はタソス役を演じる。メーキャップをなおしてやるエレクトラは思わず咳いた。“オレステス!”。そして「羊飼いの少女ゴルフォ」の幕がやがてあいた。

キネマ旬報の記事 ▼ もっと見る▲ 閉じる

2018年7月下旬特別号

巻頭特集 キネマ旬報創刊100年特別企画 第1弾 1970年代外国映画ベスト・テン:ベスト19グラビア解説

1980年2月下旬決算特別号

特別カラー・グラビア:外国映画作品賞 「旅芸人の記録」

1979年9月下旬号

外国映画批評:旅芸人の記録

外国映画紹介:旅芸人の記録

1979年8月上旬号

グラビア:旅芸人の記録

特集 「旅芸人の記録」:1 無限の魅力を秘めたギリシャ人の素顔

特集 「旅芸人の記録」:2 アンゲロプロス監督のダイナミズムの根源

2022/12/04

2022/12/05

90点

選択しない 


再鑑賞

特典映像で監督が語っていますが、決してファシズムを許さないという強い意志で描いており、戦争の残酷さ悲しさが旅芸人一座の姿に投影されています。4時間弱という長い映画ながら長さを感じさせない密度の濃い映画です。長回しを多用した落ち着いた美しい映像で、観終わって、すぐもう一度観たくなりました。

2022/04/14

2022/04/15

90点

テレビ/無料放送/NHK BSプレミアム 
字幕


羊飼いのゴルフォ

BS2放送録画の3回目の視聴。3時間越えの大作であり何度見ても完全理解は難しい。
1952年に旅芸人の一座12人がエギオンに到着したところから始まり、1939年からのギリシャの政治に翻弄された一座の過去に遡る。
1939年当時はギリシャも王制であったがが、第二次世界大戦の影が迫りナチスドイツを信奉するファシスト派と人民の対立。
対戦が始まると反イタリア(ファシスト)との対立があるが、結局ドイツに占領される。人民派は、パルチザンとなりファシストに反発。
1944年春、ドイツが撤退するが、今度は民主派のイギリス寄りとロシア寄りの共産主義との対立。12/3には十二月事件(血の日曜日)のギリシャ人どおしの殺し合いまで。
冒頭の1952年には、総選挙が行われるが元軍人のパパゴス元帥への投票の呼びかけやビラのまだまだ怪しい影。
こんな政治の混乱の中で、一座の中でも政治信条の異なるメンバー間の軋轢。ファシストを信奉するアイギストス。反ファシストのピュラデスや長男オレステスはパルチザンとなった戦う。この間に多くの団員が殺されたり、収容されたりで生き残ったのは少ないが、なぜか1952年の場面では12人。幽霊であろうか。
テオ・アンゲロプロス監督は1935年生まれで、当にこの時代を少年で過ごした。政治に翻弄される大人を見てきたことだろう。彼の信条は、やはり反戦だと思う。「エレニ」三部作でも同様であった。
もう一度見なくては、まだ理解できないでしょう。

2021/12/25

2021/12/26

90点

レンタル/東京都/TSUTAYA/TSUTAYA 高田馬場店/DVD 
字幕


圧巻な映像

 4時間近くもあるので、かなり疲れた。過去に何回か観ているので、大まかなストーリィは理解しているが、人物が分かりにくく、でも、あらすじを頼りにほとんどついて行けた。

 話の展開は若手ギリシャ神話の、エレクトラ、を題材に、旅芸人の一座の中でその通りに進んで行く。

 ギリシャ本国は、実際に政治的な混乱が延々と続き、内戦になり、ドイツにも、イギリスにも、国を助けられると思ったら蹂躙される。それでも旅芸人たちは進んで行くのが圧巻、映像も凄まじかった。

2021/12/01

2021/12/01

70点

レンタル/東京都/ゲオ/ゲオ三鷹南口店/DVD 


テオ・アンゲロプロス監督作品

この映画の素晴らしさを理解できるようになりたい。ギリシャの1939年から1953年までの独裁政権やナチス支配、連合国の傀儡軍事政権などの歴史を回想しながら旅芸人一座を描いているが、まさに製作された1975年も同様なことが起きている。過去を描きながら現在の国のあり方を問う。

2020/04/18

2020/04/18

83点

購入/DVD 


ギリシアの多重悲劇の連続

弱小国ギリシアの多重悲劇を旅芸人の観点から描く、近代史

1981/01/15

2019/05/08

90点

映画館 
字幕


思い出深い一本

ネタバレ

ワンシーンワンカットの長回しの中で時空スパンをボーダーレスに行き交う語り口や、ギリシア悲劇「エレクトラ」に祖国ギリシアの近現代史を重ね合わせた物語構成など、後に知り得た知識を参照にしつつ二度三度と繰り返し観ることで、物語内容そのものを徐々にと理解し、映画の製作背景や映像と音楽の表現意図を知るという、そういう映画の楽しみ方もあることをその昔に教えてもらった思い出深い一本。まぁ、難解なものが高尚だとは毛頭思っていないけれど、こういう映画の存在が「映画芸術」という言葉を生み出し、映画のメタフレームを拡張してきたことを実感する。

今や自身の代名詞でもある360度水平パンをはじめ、モノローグやポスターやラジオ放送を通して時代状況を表現し、ダンスや音楽で敵味方の勢力図を描き分けながら、連綿と続く歴史という無限空間の中で、ただただもがきつつ生きる他ない人間存在の有限性とその悲哀を紡ぎ出すT・アンゲロプロス。その独自の演出手腕に魅せられる至高の映像叙事詩だった。

鈍色に染まった空間が閉塞的であればあるほどに、陽光きらめく浜辺での賑やかな結婚式がより愛おしいものに感じられる。