ソ連の国土の広大さはあまねく知られているところですが、住んでいる民族も多岐にわたります。
そんな中でも、古くから移動生活を続けているロマ(ジプシー)も、ソ連のヨーロッパ寄りの地域を中心にして拠点を持っていたようです。
ゴーリキーの小説をベースにして作られた作品は、軍隊の宿営地から軍馬を盗み出したロマのグループのゾバールは、追手に撃たれ負傷したところを、やはりロマの娘ラッダの秘薬で命を助けられたことから展開してゆきます。
若く行動力はあるものの、粗暴な行動が多く、官憲の追及も厳しく、逃亡生活が続きます。
ラッダも霊能力を備えているかのようで、その二人は運命の糸に手繰られるように再会し、二人はその激しい性格ゆえに、幸せを手に入れられるところまで行きながら、自ら破滅への行動をとってしまう不条理さが際だちます。
ソ連邦の持っている多様性の一つとして取り上げたテーマであると思われますが、政治性は排除し、男女の悲恋劇のとしての展開をしたことで、歌も踊りもある若者の青春劇の色合いは濃くなりました。しかし、ロマをどう描き立ったのかの視点がはっきりしなくなったことが惜しまれます。