「愛する母の思い出に捧ぐ-アンドレイ・タルコフスキー」
ソ連の詩人アンドレイ(演:オレグ・ヤンコフスキー)が、18世紀に自殺したロシアの作曲家パーヴェル・サスノフスキーの足跡を訪ねてトスカーナにやってくる。取材の旅も終わりに近づいたある日、アンドレイは小さな温泉街でドメニコという風変わりな老人に出会う。
125分という上映時間が永遠に思われた。良い意味でも悪い意味でも。モノクロに寄せながらところどころで色を足していった映像は美そのもので、時間の経過を忘れさせた。一方でドミニコをはじめ登場人物が何をしたいのか分からず、長回しの映像が多いため少しでも気を抜くとすぐ眠くなる。配信で観たが途中2回の休憩を挟まなければならなくなり、観終わるまでに3時間近くかかった。「さすがはタルコフスキー、僕の感性をくすぐってやまない」とか、そういう小生意気なことをほざいてみたかったが、残念ながら映像だけで全てを理解するには僕の感性はあまりにも野暮で、僕の教養はあまりにも乏しかった。話の展開を追うのが精一杯だったが、観終わってから解説を読む限り映像のひとつひとつに様々な寓話が隠されているようだ。
物語の発端になる変人ドメニコにはとても理解が追いつかない。恐らく世界を気にしすぎるあまり周囲から変人扱いされているのだろうし、彼がアンドレイに託した話はドメニコ自身にとっては死活問題そのものなのだろう。だとしても最終盤のドメニコの行為はとても容認できないし、個人的にはベートーヴェンの第九をああいう使い方をして欲しくはなかった。唯一理解が追いついたのは通訳のエウジェニアがとても美しいということだけで、タルコフスキー監督に軽くあしらわれてしまった。
いずれにしても自分には早過ぎた。多分良い作品だとは思う。また出直す。