ノスタルジア(1983)

のすたるじあ|Nostalghia|Nostalghia

ノスタルジア(1983)

レビューの数

65

平均評点

74.7(304人)

観たひと

469

観たいひと

98

(C)1983 RAI-Radiotelevisione Italiana.LICENSED BY RAI COM S.p.A.-Roma-Italy, All Right Reserved.

基本情報▼ もっと見る▲ 閉じる

ジャンル ヒューマン / ドラマ
製作国 イタリア ソ連
製作年 1983
公開年月日 1984/3/31
上映時間 126分
製作会社 RAI=オペラ・フィルム=ソヴァン・フィルム
配給 フランス映画社
レイティング 一般映画
カラー カラー/ビスタ
アスペクト比 アメリカンビスタ(1:1.85)
上映フォーマット 35mm
メディアタイプ フィルム
音声

スタッフ ▼ もっと見る▲ 閉じる

キャスト ▼ もっと見る▲ 閉じる

場面 ▼ もっと見る▲ 閉じる

解説 ▼ もっと見る▲ 閉じる

自殺したあるロシア人の音楽家の足跡を追って旅を続ける詩人の愛と苦悩を描く。エグゼキュティヴ・プロデューサーは、レンツォ・ロッセリーニとマノロ・ボロニーニ。監督・脚本は「アンドレイ・ルブリョフ」「鏡」「ストーカー」のアンドレイ・タルコフスキー、共同脚本は「エボリ」「サン★ロレンツォの夜」のトニーノ・グエッラ、撮影はジュゼッぺ・ランチ、べートーヴェンの〈交響曲第9番〉、ジュゼッペ・ヴェルディの〈レクイエム〉他の音楽を使用し、マッシモ&ルチアーノ・アンゼロッティが音響効果を担当。美術はアンドレア・クリザンティ、編集はエルミニア・マラーニとアメデオ・サルファ、衣裳をリーナ・ネルリ・タヴィアーニ、メイク・アップをジュリオ・マストラントニオが担当。出演はオレーグ・ヤンコフスキー、エルランド・ヨセフソン、ドミツィアーナ・ジョルダーノ、パトリツィア・テレーノ、ラウラ・デ・マルキ、デリア・ボッカルド、ミレナ・ヴコティッチなど。2024年1月26日から『ノスタルジア 4K修復版』が劇場上映(配給:ザジフィルムズ)。

あらすじ ▼ もっと見る▲ 閉じる

イタリア中部のトスカーナ地方。詩人のアンドレイ・ゴルチャコフ(オレーグ・ヤンコフスキー)は、通訳のエウジェニア(ドミツィアーナ・ジョルダーノ)と共にモスクワからこの地にやって来た。目的は、18世紀にイタリアを放浪し故国に帰れば奴隷になると知りながら帰国し自殺したロシアの音楽家パヴェル・サスノフスキーの足跡を追うことだが、その旅ももう終わりに近づいていた。アンドレイがこの古都シエナの村まで来たのは、マドンナ・デル・パルトの聖母画を見たかったためだが、彼は車に残りエウジェニアがひとり教会を訪れた。ピエロ・デラ・フランチェスカが描いた出産の聖母像(イコン)に祈りを捧げる女たちとは対称的に膝まずくことのできないエウジェニア。温泉で知られるバーニョ・ヴィニョーニの宿屋で、アルセニイ・タルコフスキーの詩集をイタリア語に訳して読んでいるというエウジェニアに、アンドレイは反論する。「すべての芸術は訳することができない。お互いが理解しあうには国境をなくせばいい」と。アンドレイの夢に故郷があらわれる。なだらかな丘の家。妻と子供。白い馬とシェパード犬。シエナの聖カテリーナが訪れたという広場の温泉に湯治客が訪れている。人々が狂人と呼ぶドメニコ(エルランド・ヨセフソン)は、世界の終末が真近だと感じ家族を7年間閉じこめた変人だ。ドメニコを見かけたアンドレイは彼に興味を示すが、エウジェニアは、いらだったようにアンドレイの許を去った。ドメニコのあばら屋に入つたアンドレイは、彼に一途の希望をみた。ドメニコは、広場をろうそくの火を消さずに往復できたなら世界はまだ救われるというのだ。アンドレイが宿に帰ると、エウジェニアが恋人のいるローマに行くと言い残して旅立った。再びアンドレイの脳裏を故郷のイメージがよぎる。ローマに戻ったアンドレイは、エウジェニアからの電話で、ドメニコが命がけのデモンストレーションをしにローマに来ていることを知った。ローマのカンピドリオ広場のマルクス・アウレリウス皇帝の騎馬像にのぼって演説するドメニコ。一方、アンドレイはドメニコとの約束を果たしにバーニョ・ヴィニョーニにびきかえし、ろうそくに火をつけて広場をわたりきることを実行しはじめた。演説を終えたドメニコがガソリンを浴び火をつけて騎馬像から転落したころ、アンドレイは、火を消さないようにと、二度、三度と渡りきるまでくり返し試みるのだった。

キネマ旬報の記事 ▼ もっと見る▲ 閉じる

1984年5月下旬号

外国映画批評:ノスタルジア

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1984年4月上旬号

グラビア:ノスタルジア

特集 ノスタルジア アンドレイ・タルコフスキー監督作品:作品評

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1983年12月下旬号

試写室:ノスタルジア

2023/08/26

2023/08/27

75点

VOD/Amazonプライム・ビデオ/レンタル/テレビ 
字幕


タルコフスキー作品の中でも特に抽象的で難解な印象。テーマはタイトル通り郷愁とか人類の救済とかそんな感じなんだろうけど、監督自身の心象を映像化したような感じなので、正直あまりピンとこない。でもトスカーナの風景や教会、ホテルの部屋、村の狂人の家などの人工物と水、雨、霧、光、火などの自然物を絵画的な映像美の中で見事に調和させる技はやっぱり驚異的。まさに映像と音の体感。ラストカットの遺跡で呆然と佇む主人公の姿が印象的だけど、唐突過ぎて意味がわからなかった。最早理解しようとは思えないけど、何度も身を預けたくなるような映画。

2023/08/24

85点

VOD/Amazonプライム・ビデオ 
字幕


水と蝋燭の火

ネタバレ

タルコフスキー監督の作品はやはり映像の美しさが段違いだ。
しかし説明的な台詞がほとんどないために、何を描いているのかが予備知識なしでは皆目分からない。
小説でいう余白の多さが特徴的だが、それだけに観ている方は忍耐と集中力を要求される。
そして気がつけば心地よい睡魔に襲われる。
それすらも監督の狙いではなかろうか。
学生時代にこの作品を観た時はとてつもない傑作だと感じたが、今観返してみると難解さだけが際立つ。
当時も内容を理解していたとは全く思えないのだが、それでも感性にビビッと来るものがあったのだろう。
物語はロシアからイタリアに亡命したサスノフスキーという音楽家の軌跡を辿るアンドレイの視点で描かれる。
エウジェニアという通訳が彼に付き添うが、彼女は彼に自分のことを女として見て欲しいと願っているようだ。
しかしアンドレイは彼女には見向きもしない。
モノクロの心象風景が何度も描き出されるが、アンドレイの心はどこかに囚われているようだ。
彼はある温泉地でドメニコという風変わりな老人に出会う。
彼は世界の終末を説き続けており、そのために家族まで犠牲にしてしまったらしい。
アンドレイはこのドメニコに同調する。
ドメニコはアンドレイに蝋燭の火を灯しながら、水の中を渡りきって欲しいと頼む。
それが出来れば世界は救われると。
後にドメニコはローマの広場で世界の終末を人々に訴えかけ、ライターで火をつけて焼身自殺をする。
アンドレイはドメニコの頼みを引き受け、蝋燭の火が何度も消えてしまう中、水の中を歩き続ける。
そして最後に彼は発作なのか、疲れなのか、その場に倒れてしまう。
倒れた彼の姿は映されない。
ラストはまた雪の降りしきるアンドレイの心象風景の描写で終わる。
その余韻は長く美しい。
解説を読むとこれはアンドレイのロシアからイタリアへの亡命の物語であるらしい。
何度も描かれるモノクロの風景は彼が捨て去ってしまった故郷の記憶である。
サスノフスキーは一度は亡命したものの、祖国を忘れられずに帰国し、後に自殺をしてしまったという。
アンドレイはそんなサスノフスキーに自分を重ねたのだろう。
そして家族を捨ててまで信念を貫き通そうとしたドメニコにも自分との繋がりを感じたのだろう。
それを知った上でも理解出来ないシーンは多い。
映像の美しさと画面の構図の素晴らしさはもちろんだが、エウジェニア役のドミツィア・ジョルダーノの美しさも際立っていた。

2023/02/04

2023/02/05

95点

選択しない 


過去と廃墟の美しさ

何度観てもタルコフスキー映画の廃墟には魅了されます。この映画では狂人ドメニコの住む廃墟は壊れた家具や汚泥が散乱していますが、水溜りやそこに降り注ぐ水の存在が、ある種別の空間を演出しているようでした。時々モノクロで挿入される故郷や家族の映像が秀逸で、詩人アンドレイの孤独感を際立たせています。ラスト、アンドレイがドメニコに共鳴し、彼の行為を引き継ぎ蝋燭に火をつけて温泉を渡る場面はワンカットの長回しでこちらも息を潜めてしまう緊張感があり、その後の達成への安堵感が感動的でした。

2022/11/19

2022/11/20

80点

VOD/U-NEXT/レンタル/PC 
字幕


今でも、というより今こそ通用するタルコフスキー作品と言えるでしょうか

年内で30年勤めた会社を辞めます。そう決めた頃から、仕事から帰宅した後や休みに、映画を見る気力が起きず、ボッーとしています。燃え尽き症候群になったような感じです。

 ようやく、映画を見ました。敷居の高かったタルコフスキー、初めての出会いです。

 表面的なストーリーは、なんとか理解できます。
 いっしょに旅をした通訳の女性は、主人公のもとを去ります。別れに、あなたといても退屈だわ、と言われます。自由とは何?、と投げかけられます。
 その旅で出会った変人とされるドメニコは、ローマの広場で焼身自殺をしてしまいます。絶望の象徴ということでしょうか。
 主人公は、彼からロウソクの移動を成功させれば、世界はまだ救われると託され、やり遂げます。希望を繋いだと、言っていいでしょうか。

 しかし、作品はどうもそれほど単純なものではありません。このただならぬ魅力に満ちた映像の、なんと力強いことよ!二点だけ挙げます。

 故郷は、モノクロで描かれます。主人公の家族が屋敷を背景に、スタンスを保って立っています。娘が振り向くと、画面がやや明るくなります。いつの間にか、画面右上に太陽が昇っているのです。
 そして、ラスト。ろうそくの移動をやり遂げて希望を繋いだと言っても、所詮ろうそくの火ほどのかすかかなものです。しんしんと降る雪でなんとも物悲しい場面ですが、実に優しく感じます。

 この映画が出来て40年近くになりますが、ここでタルコフスキーが刻んだ魂というものは、現在も充分通用しているように思えてなりません。

2022/06/19

2022/06/19

10点

VOD/GyaO! 


退屈な誇大妄想の果て

退屈な映画。
世界を2人の男が救うとはなんと誇大妄想なことか。
マルクス・アウレリウスの像の上に並び焼身自殺する男も生きることと死ぬことの境界を見失った男のカオスの終着点を第9で閉じる空虚さが画面に充満する空しさ。
本作で唯一共鳴したのは主人公が夢の中で彫像となった自分の不自由さと恐怖を語るところがソ連での表現活動の不自由さを告白しているのかな点だ。
主人公はイタリアに滞在し、通訳の女のモーションも気にしない。
やはり主人公も心臓病患者で死と生の境界線を見失って、おそらく彼の少年時代の母親の面影を織り交ぜながら故郷を思い返しているのかなと思わなくもない。
ただそれは極私的な表現で見る者に共感を呼ぶ類のものでもない。
したがって退屈は倍加していくのだった。

2022/05/20

2022/05/21

70点

テレビ/無料放送/NHK BSプレミアム 
字幕


難しい

2022年5月20日
映画 #ノスタルジア (1983年)鑑賞

ソ連を離れ“亡命者”となったタルコフスキーの初の異国での作品であり、祖国を失ってさまよう彼の心情が如実に出た、哀しく重厚で、イマジネーションに溢れた映像詩

というのを知らないとよく分からないと思いました