「アメリカの夜」に「隣の女」と「アデルの恋の物語」の妄執をプラス
見終わっても幸せな気分になれない。「フランス軍中尉の女」という映画がまず面白くない。「アメリカの夜」の映画中映画「パメラ」もどうでもいいような映画だったけど監督やスタッフがもっとからんで盛り上げてた。これには監督も出てこないしカメラも録音も出てこず「フランス軍中尉の女」は完成された映画として進んでいき、現実の俳優としてのマイクとアンナが「フランス軍中尉の女」に侵入してくる。そこにしか面白さがない。二人で演技を確認しあうとこなんかすごくいいのだが。
「ヴィクトリア朝の既婚男性は週に2,4回、売春婦とfuckしてた」なんてマイクが言うのに意味あるの?終盤、顔を白粉で塗りたくった売春婦の無惨な姿を執拗に映し出すが、リチャードと宿に連れ立って入る売春婦はエルネスティーナだったよね。女はみんな売春婦だ、とでも言いたいのか?
1stシーンの「フランス軍中尉の女」のカチンコが出てメリル・ストリープが防波堤をずっと歩いて行き振り返るとこが一番いいかな。
「マディソン郡の橋」に続けて見たのでメリル・ストリープについて一言。とにかく苦手な女優だったが上手いし彼女の出演作は見ておく価値はあるとわかった。
ここでもヴィクトリア朝時代の抑圧された女性、マントで頭から全身を覆って波にさらされている姿の圧倒的存在感と、ショートカットのヘアスタイルで活動的な生き生きした女優との落差を存在として見せたことにこの映画の価値がある。
そこにしか、メリル・ストリープにしか見る意味はない。