赤い光が強く感じられ,その奥に青い光が感じられる.それでも冒頭は 岩だらけの荒野の空撮から入っていく.青空は広がる.ワシだろうか,タカだろうか,猛禽類がとらえられる.あるいは,その眼光に人物は晒されている.赤い帽子,ひげづらでポリタンクを持ってその空間を放浪し,ネクタイとスーツを着用した男がトラヴィス(ハリー・ディーン・スタントン)である.
カメラのズームや移動を超え,彼は歩いているように見えるが,ちょっとこけたりもする.氷をかじって倒れ,ヌード写真もそこにはチラついている.テキサス州の病院に収容されているが,彼の弟のウォルト(ディーン・ストックウェル)が失踪していた彼を引き取る.
巨大な広告看板が見える.黄色い帽子をウォルトは被って、携帯電話でビジネスをしている.キャメラの動きはこの兄弟に同調していくかに見える.トラヴィスはしゃべらずに歩き,脇目もふらず歩いている.その方向には電線が伸びていることもある.開かれた助手席ではなく,後部座席に乗る兄がおり,乗り込んだ瞬間,車は大きく揺れる.
赤いシーツが見える.線路上を歩いていることもある.不思議な音が聞こえ,歌うようにしてしゃべることもあり,音楽がどこか優しい.車載のキャメラがワイパーによって瞬間的に遮られている.トラヴィスは異様にニコニコしているように見える.彼は飛行機に乗れないらしい.1枚の写真を手にしており,こうしたテキサスの人物たちは,「その後の」西部劇という観もある.
4年は長いか,8歳の子の人生の半分ではある.舞台はロサンゼルスに移されている.視線がまず先に現れているようにも見える.足元のローポジションから入るシーンもある.飛行機の音がいつも聞こえている.写真やゲームが家庭にはあり,歌を歌いながら洗い物する姿も見える.磨いた靴が並べられており,ハイウェイには,車が走っており,草が揺れている.双眼鏡でそうした風景を覗いているトラヴィスは宇宙人のようでもある.飛行機の影を追ってもいるらしく,時にアメリカの国旗が見える.
坂道がその街にはあり,その展望地にウォルトの家は新築されている.8ミリ映画が家庭で上映される.子のハンター(ハンター・カーソン)は恥ずかしいのか水槽の中の魚を眺めている.テキサスの海岸が見えている.フィルムの回転音が聞こえてくる.車道を挟んで息子と実の父は歩き始める.
ハイウェイを渡るとき,謎の悲しげな演説をしている男がおり,少しの接触をしてトラヴィスは進む.彼は,捜し始めている.赤いシャツを着ている.遠くには山並みが見え,近くにはジャンクションが見え,その下で小さな食事がなされる.宇宙センターのあるヒューストンへと舞台は映っていく.双眼鏡が携えられる.スター・ウォーズのプリントされた,ハンターの寝具が残されている.光の速さについて,ハンターの演説がある.無線から聞こえる声は電波のようで,宇宙的でもある.貴婦人がマジックミラー越しにいて,その姿を見ることができる.妄想は信じられている.