当時からソーシャルデスタンスという言葉はあり、それは2mである、ということをこの作品から学びました。エイズは報道では知ってはいましたが、それほど身近ではありませんでした。しかし、コロナは近くで何人もの感染者が出て、偏見・分断・孤立というものを皆がいやっというほど経験しました。微妙な違いはありますが、他人事とは感じませんでした。
エリック少年は両親が別居し、母親とうまくいってません。そこへデクスター少年が隣に越してきます。彼は輸血が原因でエイズになっています。彼の母はシングルマザーですが、息子を心から愛しています。隔てる壁は高いですが、二人は出会うべくして、出会います。
チョコバー、薬草、治療薬を求めて川下りなど、大人から見れば無茶するなあという感じですが、病気を治そうとする気持ちから発する少年たちの行動は、とても純粋なのです。
毒草の件では、デクスター母は特に咎めません。これは、簡単にできることではありません。
川下りのテントでは、宇宙の果てが暗くて寒いというデクスター少年の悪夢の話になります。大事な伏線です。コンバースのくさい匂いをかけば大丈夫だよ、とエリック少年が励まします。
青年たちに追われると、デクスター少年は自らの手を傷つけて、僕はエイズだ、と彼らを追い払います。
病院に入っても、彼らの無邪気な行動は続きます。仮病を使っての呼び出しは、さすがに調子に乗り過ぎかな。
医者が言います。歴史を読むとひどい病人が突然元気になった話が幾つもある。人はそれを奇跡という。現実的にも映画的にも、これほど威厳に満ちて優しい医者は、久しぶりに拝見しました。
それから、「20001年宇宙の旅」。彼らは20回見ている、という。KINENOTEの点数で私の場合、75点以上は人に薦めることのできる作品、85点以上は強く人に勧めることのできる作品、95点以上は人生の宝という基準ですが、まだ95点以上つけた作品はありません。彼らにとって、「20001年」は人生の宝だろうなぁ。
3回目の呼び出しから革靴が川を流れていくまで、私の涙腺は緩みました。デクスター母の一言いや二言、コンバースと革靴とエピソードを重ねます。泣かせるより、自然と泣ける作りで、見事です。