ニューヨークの下町ブルックリンで暮らす個性的な人たちの出会いと触れ合いを通して、人生の一断面を描いた群像劇。
小説家ポール・オースターが自らの小説をもとに書いたシナリオを、香港出身のウェイン・ワンが監督。
日々の生活の中で見過ごされ、やがて忘れられてしまうような人々の生活を丁寧に掬い取り、それをこのような物語として纏め上げた手腕は素晴らしい。
そしてそこで語られるさまざまなエピソードや蘊蓄のあるセリフの数々が深く身に沁みる。
主人公はブルックリンの街角で煙草屋を営むオーギー・レン(ハーヴェイ・カイテル)。
そしてその店の常連の小説家ポール・ベンジャミン(ウィリアム・ハート)。
そのふたりを中心にポールが偶然知り合うことになった黒人青年ラシード(ハロルド・ペリノー・ジュニア)や、オーギーの昔の恋人ルビー(ストッカード・チャニング)とのエピソードが淡々と描かれていく。
派手な展開はないが、しみじみとした語り口にはホロリとさせられる。
さらに主人公オーギーを演じるハーヴェイ・カイテルと、小説家ポール・ベンジャミンを演じるウィリアム・ハートの男の友情がこの映画最大の魅力。
ふたりの味わいのあるやりとりや、たたずまいを見ているだけで幸せな気分になってくる。
そしてその触れ合いから滲み出る人生の機微に思わずニヤリとさせられる。
20数年ぶりに観直したが、以前観たとき以上の感動があった。
やはりいい映画というのは何回も観るべきだとあらためて実感した。