宝石に麻薬といった新大陸の資源や加工品がアメリカにいったんは集まり,その取り扱いは違法であるから,集まり,売られるどこかの段階で,暴力や権力によって品を奪取することができる.この違法な取引は,汚職警官らによっても支援されているし,取引ルートにかかわり手を染め,検挙されても,また取引に関わらざるをえない嫌な拘束力がある.
黒幕ではないものの,リーダーらしき男ディーン・キートン(ガブリエル・バーン)がいて,港で船舶の爆破があり,その焼死体の中に彼がいたのか,それともどこかで生き伸びているのかが問題になる.そしておしゃべりな(ヴァーバル・)キント(ケヴィン・スペイシー)の取調べにより聞き出された内容により回想が始まる.
船では,炎がチラつき,タバコとライターの赤味が連動している.船からの排水やロープによる緊縛のイメージが連鎖される.黒焦げの焼死体が現れ,27人の死亡が確認されたという.この事件によって,ニューヨークからカリフォルニアにクイヤン捜査官(チャズ・パルミンテリ)がやってくる.発端はニューヨークでの捜査にもあるらしい.
トッド・ホックニー(ケヴィン・ポラック),忍び込みのプロ,マクナマス(スティーヴン・ボールドウィン),赤シャツのフェンスター(ベニチオ・デル・トロ)らが集まり,鉄格子の中でキートンやキントと顔を合わせている.彼らによって襲われ,人間が殺され,金品が奪われていく.彼らのグループ犯罪は,常習性を超えてエスカレートするところに特徴があり,そのさらに先のヤマへと,レッドフット(ピーター・グリーン)によって導かれていく.キートンの相棒であり恋人の弁護士イーディ(スージー・エイミス)も間接的に彼らの殺人や強盗の犯罪に加担している.
レッドフッドは,さらにコバヤシ(ピート・ポスルスウェイト)という男を紹介し,コバヤシによってカイザー・ソゼの存在が示唆される.
ケースを開けてみれば,そこにあるのは宝石ではなく,コカインである.ほんのちょっとした加減で殺され,死体は海辺に寝転がり,背後から撃たれ,取引の過程で命が費やされていく.この死にやすく,裏切りやすい環境においては,裏を取ることよりも,その場その場の言葉に対しどこまで信頼をおき,行動を賭けていくかが問題になる.そこに虚実が入り乱れ,幻想が浮かび上がる仕掛けがある.