シリル(トマ・ドレ)は、もうすぐ12歳になる少年。彼の願いは、自分を児童養護施設へ預けた父親(ジェレミー・レニエ)を見つけ出し、再び一緒に暮らすこと。電話が繋がらない父を捜すため、学校へ行くふりをして父と暮らしていた団地へと向かうが、呼び鈴を押しても誰も出ない。探しにきた学校の先生から逃れようとして入った診療所で、美容院を経営する女性サマンサ(セシル・ドゥ・フランス)にしがみつくシリル。“パパが買ってくれた自転車があるはずだ!”と言い張るが、部屋を開けるともぬけの殻。ある日、シリルのもとをサマンサが訪ねてくる。シリルの話を聞いて自転車を探し出し、持っていた人から買い取ってくれたのだ。“乗っていたそいつが盗んだんだ!”と憤るシリル。サマンサに週末だけ里親になってもらうことを頼み込み、一緒に過ごしながら、父親の行方を捜し始める。自転車の売り主はガソリンスタンドにあった“自転車を売る”という貼り紙を見て、手に入れたという。大切にしていた自転車を売ったのは父親だったのだ。貼り紙から住所を探し出し、ようやく父親と再会するシリル。父親は“お金がなくて迎えに行けない”と弁明する一方で、密かにサマンサに“重荷なんだ。会いたくないと伝えてくれ”と頼む。しかし、サマンサは、自分で告げるよう父親に言う。“もう会いに来るな”との言葉を残して、扉を閉める父親。これをきっかけに、サマンサはそれまで以上に真摯にシリルと向き合い始める。恋人との間に軋轢が生まれるほどに、彼女はシリルを大切に思い始めていた。どうしようもなく傷ついた心を抱えるシリル。ふたりの心は徐々に近付いていくかに見えた。けれど、ふとしたことで知り合った青年との関係が、シリルを窮地に追い込む……。