気の狂った人形師長次が、「人形の呪いだ……まぼろしの呪いだ」と口走って歩く予言が当たって目明かし越後屋弥助、用人木村甚内、前南町奉行前田丹波守などの許へ「お命頂戴、まぼろし」の通告があり、まず弥助がのみで刺殺され、そののみが、丹波守秘蔵の人形の手に握らされていた事件が起こり、続いて木村甚内が毒殺され、毒薬の包みがやはり人形の前におちていた。こうなると料亭喜仙でおいとの小唄をききながら居眠りしていた若さま侍も、おみこしをあげたが、こんどは丹波守の身代わりの原勝馬という同心が殺され、その死骸が紛失した。丹波守の秘蔵の人形は、その昔彼に処刑された美男美女の盗賊新三お浜の夫婦にかたどって長次の彫ったもので、その後長次は気がふれ、その娘のお艶は、湯女に身をおとしながら、ひどく丹波守をうらんでいるという事実や丹波守の養女楓が実は新三お浜の間の娘であったこと、楓に兄があり、それが実は原勝馬で、一旦殺されたように見せかけた彼こそはまぼろしの正体であった事などを、若さま侍は例の如くきびきびと処理するのだった。