人生の悲劇は些細な原因から始まることが多い。エディス・ラリスンは恋人のジムと一寸した喧嘩をしたのが因で現在の良人のノートと結婚したが傲慢で気むづかし屋のノートとの結婚生活が楽しかるべきはづはない。蔭ながら今でも自分に好意を寄せていてくれるジムを慕う心は昔と変りはなかったがエディスも今は人妻の身、彼と打ち解けて語らうことさへ出来なかった。ノートは未だにエディスとジムの仲が村人の口の端に上るのが気に入らなかった。エディスに命じてジムと絶交させようとしたが何等邪しい事実のないエディスは承知しなかった。かえって自分の誕生日の宴会にジムを招待したのである。飽くまでジムを嫌うノートは彼の家を訪れてジムの出席を禁じた。ジムはエディスの幸福を思って黙ってノートの言葉を承認する。ジムの不参で沈んでいたエディスの前に気紛れな運命の手がまた延びて事件を起そうとする。エディスはジムの来ない理由を知って良人を詰り、ノートは嫉妬心も手伝って口汚くエディスを罵る。興奮したエディスは突然家を飛び出して自動車をかり父の許へと急いだのである。その夜は嵐であった。泥濘の田舎道を走る自動車は兎もすれば進路を失い勝ちであった。遂にエディスは闇黒の中に迷い込み落雷のために倒れた大木を避けんとして自動車を泥沼の中に乗り入れてしまう。止むを得ず豪雨の森林を彷徨していた彼女は偶然ジムの家を見出し漸く疲労した體を休ませることが出来た。エディスがジムの家に一夜を過した事実は小さな村の隅々まで知れ渡った。噂を聞いて激怒したノートは我が家にジムをおびき寄せて彼の生命を奪はうと計る。エディスがこれを探知してノートの家にかけつけた時ジムは未だ来ていない。彼女は反ってノートのために檻禁されジムが来たのを知っても如何ともする事が出来なかった。憂慮の中にピストルが鳴る。しかし意外にもエディスの檻禁を解いたのはジムであった。ノートはジムを殺さんとしてシェリフのために射たれたのである。エディスとジムが天下晴れて恋を語らう日も程近きにあろう。