浪人笹井又四郎は、ある夜、浪人者の一団に連れ去られようとしている深川の芸者お艶を救ったことから磐城平七万五千石の家中にお家騒動の動きのあることを知った。平藩では国元の多恵姫に松平の若君源三郎を婿に迎えることになったが、江戸表の側室お千代の方の生んだ千鶴姫を世継に立て藩政をわが物にしようとする江戸家老大島刑部は、中老松島と生き写しのお艶を松島の身替りとして国元へ使者に立て、御家相続のお墨付を奪おうと計画していたのだ。そこで、刑部と手を結ぶ磐城屋庄兵衛がお艶をくどいた。お艶が断ったため、浪人を使ってお艶を狙ったというわけだった。又四郎は身辺を守る約束をして、お艶に身替りになって平へ行くよう勧めた。又四郎は仲間の喧嘩で殺されそうになった磐城屋の手下常吉を救い、子分にした。一方刑部側では辻斬り浪人の鬼塚甚十郎を仲間に入れた。お艶は、刑部の腹臣主水、甚十郎、磐城屋らに守られて平へ急いだ。彼女の駕篭わきには、常吉がつきそっていた。又四郎も女芸人お雪一座と平へ向っていた。彼は平藩へ入ると、国家老の内藤治郎右衛門の家へ、多恵姫の視察にきた松平源三郎の家臣と名のって訪ねた。が、治郎右衛門の子小次郎は又四郎の身分に疑いを抱いた。多恵姫は、江戸表の陰謀派の動きを率直に語る又四郎に心をひかれた。主水らは姫のそばに控える又四郎を見て驚いた。実は又四郎とは仮の名、松平源三郎だったのだ。平城に決戦の時が来た。源三郎の剣は冴えた。