十九世紀末のパリ。演劇学校を出たばかりのフェリシイ・ナントイユ(ミシュリーヌ・プレール)は、オデオン座の俳優エイメ・カヴァリエ(クロード・ドーファン)に女優としての才能を認められ、彼の推薦でオデオン座に入ることが出来た。彼女を教えるにつれ、カヴァリエは烈しい恋のとりことなり、フェリシイも芝居に対する野心から彼に身を許した。フェリシイは美貌と才気からめきめき人気を上げたが一方弱気で風采の悪いカヴァリエは一向にうだつがあがらず、次第に彼女は彼を軽蔑し、うとんずるようになった。或夜フェリシイは、色事師の若い外交官ド・リニイ伯(ルイ・ジュウルダン)にあい、一瞬でその魅力にひきつけられてしまった。カヴァリエは二人の仲を割こうとあせり出すが、脅しや泣言をきかされるたびに、フェリシイはいよいよ彼を見くだし、ついには顔を合わせるのさえ避けるようになった。嫉妬にかられたカヴァリエは彼女を殺しかねなくなったが、その恐怖から却って彼女はリニイに近ずき、二人はかくれ家にひきこもった。あとをつけたカヴァリエは、二人を前にして、うらみの言葉と共にピストル自殺をして果てた。以来彼女の夢枕には血に染ったカヴァリエが現れ、つきぬ恐れから彼女は彼の墓に訪でてリニイと逢わぬことを約束した。一ケ月後、フェリシイは事件後始めてリニイと会い、誘われるままにかくれ家に行った。が彼の腕の中で彼女は突然カヴァリエの最後の姿と言葉にさまたげられた。のち、年毎にフェリシイの女優としての地位は高まって行ったが、舞台を降りた彼女は哀しみも歓びもしらぬひとりの老嬢であった。