この若い男(P・オスカルソン)は百貨店の夜警である。彼は毎夜、空虚な店内に投げ出されてあるマネキン人形の群を見ているうちに、いつしかその中のひとつに烈しい恋をした。彼には生身の女性よりもマネキン人形の方がはるかに美しく理想的に見えた。そしてついにある夜、彼はその人形を盗み出し、自分のアパートの部屋へ持ちこんだ。一瞬にして殺風景な男の部屋に花が咲いたようになった。彼はその人形を狂おしく愛撫した。そして沈黙の支配する中で彼は生れて初めて愛する歓びを知った。ある夜、固く動かなかったマネキン人形(G・ペトレ)が彼の愛撫に応えた。アパートの住人たちは彼の不可解な様子をいぶかった。ひとりの荒くれ男は、好奇心をおさえかねて、夜警の部屋におしいった。男がベッドの中に見たのは冷たい石のマネキン人形だった。仕事から帰ってきた夜警は皆から笑われ、その上人形をぶちこわされてしまった。愛人をこわされ、夢を破られた男は怒り狂い拳銃でその男を殺そうとしたが、失敗した。夜警の部屋には、手も足も胴もバラバラになったマネキン人形が散らばっていた。だが暗い片隅にころがっている首だけが、ニコッとほほ笑み、夜警の愛撫を求めていた。