一九三五年、ファシスト時代のローマでのことである。貧しいアドリアーナ(ジーナ・ロロブリジーダ)はモデル女としてアトリエに通ううち、金持のお抱え運転手ジーノ(フランコ・ファブリッツィ)と恋に陥った。ある日曜日、モデル友達のジゼラ(セニア・ヴァルデーリ)にドライブを誘われたアドリアーナが、内務省の大物アスタリータ(レイモン・ペルグラン)に体を許したのは、酒に前後を忘れたからだった。彼女は数日後、アスタリータからジーノには妻子があると聞かされた。絶望したアドリアーナはそれ以来、男から男へ、行きあたりばったりの愛情に生きる女になった。そのうち、ミーノ(ダニエル・ジェラン)と知り合ったが、彼は今迄に会ったどの男ともちがっていた。一方ジーノの友人で宝石商殺しの犯人だと自称するソンゾーニョは、ミラノへ逃げて世帯を持とうといい寄るが、彼女は相手にしなかった。ある日、思いがけなくミーノが現れて、反政府用のビラの包みを預けにきた。彼は政治運動をやっていた。警察の手を逃れた二人はアドリアーナの田舎で一緒に楽しい日を送った。アドリアーナは生れて初めて味わった幸福の日々であった。やがて、ローマに帰った彼女は、ミーノが警察につかまったことを知って、アスタリータにミーノの釈放を願うが、帰ってきたミーノは別人のように変っていた。同志を裏切って、アスタリータの訊問にすべてを告白したというのだ。その調書さえなければミーノの心の傷が癒えると考たアドリアーナは、アスタリータを電話で呼び、ミーノを心から愛していること、そしてやがてミーノの子供が生まれることを打明けた。だが、事務所に帰る途中、アスタリータはソンゾーニョに襲われて殺された。その騒ぎの中にミーノは失踪した。幾日か過ぎてアドリアーナはミーノから遺書を受取った。同志を裏切った自責からミーノは死を選んだのである。死体公示所に出頭したアドリアーナはミーノの遺骸にすがって泣き崩れるのだった。家に帰る道すがら、彼女は生れて来る子供のことを考えた。そして、もし男の子であったらミーノという名をつけ、もし女の子であったなら、自分に恵まれなかった幸福な生涯を送るようにレティツィア(歓び)と名づけようと決心した。