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3人のアンヌ
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ホン・サンス監督の映画は初見。生活に悩みを抱えているらしい脚本家が、なんだか干した魚の匂いがしてきそうな韓国の田舎の海岸のペンションで3本の脚本のアイデアを書き散らす。この3本のシナリオがそのままこの映画のストーリーとなる。 舞台となるペンションにイザベル・ユペール演じるフランス人が様々な役どころでやってきて、ペンションの女の子に地域の見所として灯台を案内され、海岸の便所の前のテントに寝泊まりしている朴訥なライフガードの男に出会い、そして別れるという主筋はすべて共通。3つの話は少しずつシチュエーションを変えながらも、完全に共通した幾つかの場面(ペンションの女の子に傘を借り、途中まで買い物につきあう、海岸に出ると他に誰も泳いでない海を必死すぎるクロールでライフガードの男が泳いでいて、あがってくるとこれまた必死すぎる英語でイザベル・ユペールと会話する)を挟みながらも、周囲を取り巻くキャラクターと彼らが引き起こすエピソードを巧みに変奏しながら、イザベル・ユペールとライフガードの男の心理的距離を少しずつ近づけていく。観客は繰り返される微笑ましい会話によりすっかりこのライフガードの男の朴訥さが好きになっているので、彼のオレンジ色のTシャツが画面に映るだけでなんだか「がんばれよお前」という感情が起きてくるから面白い。そして最後の話では…。 干潟での不倫キスモロばれ等の地味だが印象的すぎるシーンの数々や、ユペールに近づくライフガードの男について「ああいう韓国の男には近づかない方がいい、我々とは違う」などとのたまう映画関係者のキャラを通したインテリ層批評など、ただのアート映画では割り切れない面白みも交えた佳作。他のホン・サンス作品への興味も湧いた。
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