67歳の林恵子は、熊本県で訪問介護の仕事をしている。子どもたちはすでに独立し、休日は友人らとカラオケや居酒屋に通う、一見平穏な日常を送っている。そんな彼女には、家族や親しい友人にも語ってこなかった秘密があった。20歳上の姉、愛子が北朝鮮にいるのだ。愛子は1960年に在日朝鮮人の夫とともに北朝鮮に渡った。渡航後、手紙で伝えられる姉の変貌ぶりに、恵子は落胆し、反発を覚えた。そして絶縁する。その後、日朝関係は悪化し、音信不通の状態になったまま、58年の歳月が流れた。ある時、姉の消息が知らされる。人生の残り時間が少なくなるなか、姉への思いが再び頭をもたげ始める。恵子は子どもたちの反対を押し切り、訪朝を決意する。北朝鮮が人生初めての海外旅行先となった。謎の隣国で目にする未知の世界は、その後の恵子の人生も変えていく……。