イングランドのアナーコ(無政府主義)・パンク・バンド“CRASS”は、同時期に活動したSEX PISTOLSやCLASHなど、商業主義に絡め取られた初期パンク・バンドを反面教師とし、「誰にも支配されず独立した一人一人の行動が平和につながる」という平和主義を基本とした。メンバーは“ダイヤルハウス”と呼ばれる家で共同生活を送り、レコーディングやレーベル運営などすべて自分たち自身で行うというDIY精神を貫き、反戦、反核、反キリスト教、反物質主義、反動物虐待、反性差別、反環境破壊などについての強力なメッセージを発信した。彼らのレーベル“CRASS RECORDS”はビョークがヴォーカルだったK.U.K.L.ほか、CAPTAIN SENSIBLE(ex. THE DAMNED)、THE MOB、ZOUNDS、CONFLICTなど100組近いバンドを輩出した。現在も、主要メンバーはダイヤルハウスで自給自足の生活を送っている。本作は、当時の貴重な映像や楽曲を織り交ぜつつ、現在の彼らの様子を映し出し、今日の経済成長のパラダイムや消費中心主義世界への疑問を浮き彫りにする。彼らは、「疑問を持ったら主張すべきだ、何故なら、自分を支配できるのは自分だけなのだから」と語りかける。