第二次世界大戦直後のブラジル。サンパウロ州の小さな町では、大勢の日系移民が寄り添うように暮らしていた。政府によって、日本に関する情報を遮断された彼らの大半は、未だ日本軍の勝利を信じて疑わない。写真館を営むタカハシ(伊原剛志)もその1人だった。教師の妻ミユキ(常盤貴子)と暮らすタカハシは、隣人のササキ(菅田俊)と妻ナオミ(余貴美子)、その一人娘アケミ(セリーヌ・フクモト)と家族ぐるみで付き合っていた。そんなある日、元陸軍大佐ワタナベ(奥田瑛二)たちが、当局に禁じられた集会を開き、官憲との間でトラブルになる。これをきっかけに、ポルトガル語のラジオ放送で日本の敗戦を知ったササキやアオキ(矢崎勇)たちのグループと、ワタナベ、タカハシたち日本の勝利を疑わないグループが対立。ワタナベは、アオキたちを“裏切り者”と断じて、タカハシにアオキ抹殺を命じる。戸惑いつつも、逆らうことができずに、タカハシはアオキを惨殺。しかし、その現場をミユキが目撃してしまう。これを皮切りに、ワタナベ一派による粛清が本格化。裏切り者と見なした日系人たちを次々と拳銃で殺害してゆく。日本刀を携えたタカハシは、ついにササキをも手にかける。夫の亡骸を埋葬し、娘のアケミを連れて列車で町を後にするナオミ。その列車には、夫に失望したミユキの姿もあった。独りになったタカハシは、ワタナベの息がかかったヤマダという人物から“マッカーサーが天皇に降伏”という新聞記事ねつ造の協力依頼を受ける。日本が勝ったのなら、なぜそんなことをする必要があるのか。タカハシの中で、ワタナベに対する疑念が膨らんでゆく。やがて彼の迷いを見抜いたワタナベは、非情にもタカハシに向けて刺客を送る。はたしてタカハシは、戦争の真実を知り、自分が犯した罪と向き合うことができるのか。そして最愛の妻ミユキや、可愛がっていたアケミと再会する日は訪れるのだろうか……。