東京の片隅に暮らすボクサー志望の青年田村(遠藤要)。痴呆の祖母澄代(小野敦子)の世話をする毎日の彼は、バイトをクビになり、夢も希望も金もない最低の日々を送っていた。ボクシングだけが心の拠りどころだったが、ジムの先輩榎本(玉井英棋)からは当り屋で金を稼ぐことを強要される。そんなある日、新進気鋭の漫画家服部(岩瀬亮)がジムを訪れる。漫画“イエローキッド”の主人公のモデルとして、元アマチュアボクシング世界チャンピオン三国(浪岡一喜)を取材することが目的だった。服部のファンだった田村は、この訪問をきっかけに服部と親しくなる。一方、服部はかつて自分の恋人だった麻奈(町田マリー)が三国と同棲、妊娠していることを知る。三国に対して憎しみを抱いた服部は、三国を予定していたキャラクターのモデルを田村に変更、三国を悪役“ブラッディ・サン”として漫画を描いていく。その頃、田村の自宅には榎本が訪れ、澄代の年金を奪っていく。榎本を追って街に出る田村だったが、彼を見失い、突発的に通行人の財布を奪ってしまう。さらに、当たり屋の現場に遭遇すると、榎本たちから金を横取りする。行き場のない怒りをぶつけるように、ビルの屋上から奪った現金をばら撒く田村。新聞の記事になったこの田村の行動を知った服部は、その行動が自分の漫画と同じであることに気付く。漫画同様に、田村が“ブラッディ・サン”=三国を殺すつもりだと直感した服部は、三国のアパートへ向かう。扉を開けた服部の目に飛び込んできたのは、怯える麻奈、血まみれの田村、無残な姿で横たわる三国の姿……。だが、それらはすべて服部の妄想だった。いつしか、服部は田村と漫画の主人公を混同するようになっていたのだった。そのころ田村は、澄代を置いて家を出る決意を固めていた。だが、荷物を抱えて家を出た矢先、彼は榎本に切りつけられる。血を流して倒れる田村。榎本はその場を走り去っていく……。