「奈緒ちゃん」「えんとこ」の伊勢真一監督が、小児がんと闘う子どもたちと医療関係者、ボランティアの活動を10年がかりで記録したドキュメンタリー。2008年夏、聖路加国際病院副院長の細谷亮太医師、済生会横浜市東部病院小児医療センター長の月本一郎医師、あけぼの小児クリニック院長の石本浩市医師の3人によって企画された“SMSサマーキャンプ”は10年目を迎えた。毎日病室で治療の日々を送る小児がん患者の子どもたちに、自然との触れ合いや元患者のボランティアとの交流の機会を与えようというこのサマーキャンプを、カメラは10年間追い続けた。「命を救ってもらったお返しのつもりで、困っている人や弱い人を助ける仕事をしたい」と夢を語っていた少女は看護師になり、「子どもが欲しい」と切実に吐露していた放射線治療体験者は無事、母親になる。だが、「学校の先生になり、小児がんや難病のことを子どもたちに知って欲しい」という願いを胸に他界してしまった者もいる。小児がん患者や体験者を、悲劇の主人公ではなく“再生”のシンボルとして描いた本作は、単なる難病を扱ったドキュメンタリーという枠にとどまらず、命の尊さ、生きる意味、未来への眺望の映像化として、閉塞的な現代の社会全体に大きなメッセージを送っている。