2002年春、イスラエル軍のヨルダン川西岸への侵攻作戦のなかで、バラータ難民キャンプ包囲と、ジェニン難民キャンプ侵攻が起こった。イスラエル軍による包囲は2週間にも渡り、パレスチナの人々は破壊と殺戮の恐怖にさらされた。占領地に赴いた経験を持つ、元イスラエル軍の将兵たちによって作られたNGO“沈黙を破る”は、創設者で代表を務めるユダ・シャウールをはじめ、20代の青年たちが中心となっている。2004年6月、彼らはイスラエル最大の都市・テルアビブで、“沈黙を破る--戦闘兵士がヘブロンを語る”と題した写真展を開催した。その写真展では、占領地で撮影した写真や、占領地で行われた虐待、略奪、一般市民の殺戮などの加害行為を60人の元兵士たちが告白する証言ビデオが展示された。占領地で絶対的な権力を手にした兵士たちは、次第に倫理や道徳心を失っていった。しかし、自分たちの人間性の回復と、祖国イスラエルの蘇生のために声を上げたこの写真展は、国内で大きな反響を呼んだ。祖国への裏切りという非難を浴びながらも、発言を続けるユダヤ人の若者たちの生の声は、“パレスチナ・イスラエル問題”という枠を越え、人間の普遍的なテーマに迫る。