フランス・パリ。7歳の少年シモン(シモン・イテアニュ)は、駅前で赤い風船を見つける。シモンが手を伸ばすがどうにも届かない。諦めてメトロに乗り込んだシモンだったが、風船は彼を追いかけてきた。その頃、中国人留学生ソン(ソン・ファン)は、シモンの母で人形劇師のスザンヌ(ジュリエット・ビノシュ)を訪ねる。新作劇の準備で忙しい母親に代わり、シモンの面倒を見ることになったのだ。母子は古いアパルトマンの最上階で生活し、その階下のピアノのある部屋を友人マルク(イポリット・ジラルド)に貸している。公園でソンと遊ぶシモンは、別居中の父親のことや、ブリュッセル在住の父親違いの姉ルイーズ(ルイーズ・マルゴラン)のことをソンに話す。二人が自宅に戻ると、スザンヌが弁護士のロレンゾに電話をしながら取り乱していた。スザンヌは、家賃を滞納するマルクを追い出し、そこにルイーズを呼んでパリの大学へ通わせるつもりだった。ある日、ソンが連れてきた盲目の調律師が、階下から運んできたピアノの音合わせをしていると、マルクと激しく言い争いながらスザンヌが部屋に入ってくる。さらに、ルイーズからパリへは行かずブリュッセルに残るという電話がかかってきた。打ちひしがれるスザンヌにシモンはそっと寄り添い、ソンは静かに見守る。不協和音だったピアノの音が、次第に美しい音色を奏でていく…。オルセー美術館で絵画鑑賞をしているシモンたち。シモンがふと天井を見上げると、天窓の向こうに赤い風船が浮かんでいる。風船はそのままパリの上空をふわふわと浮遊していくのだった。