冬の間、ナヌーと母ぐまは、穴の中で六ヶ月間、何も口にせずに生きてきた。そして北極はいよいよ春を迎える。白くまたちはエサを求めて旅に出るのだった。海に向かい、氷の下のアザラシを狙うが、なかなか成功しない。容赦なく進む地球温暖化の影響で氷が溶け出し、狩り場が年々少なくなってきているのだ。死に至る飢えの恐怖、雄ぐまの脅威、時速100km以上の激しいブリザード。とうとうナヌーの小さな弟は、嵐の中で力尽きて倒れてしまう。温暖化のため、季節の移り変わりも徐々に早くなってきていた。ナヌーと母ぐまの別れも容赦なくやってくる。母ぐまと一緒に過ごした時間が短かったナヌーは、狩りのやり方すら教えてもらっていなかった。しかし、これからは一人で生きていかなければならない。一匹の小さな白くまにとって、北極はあまりに広大だった。いつまでも海に氷が張らず、行き場を失ったナヌーは、勇気を振り絞って海に飛び出していく。まだ見ぬ未知の大陸を目指して…。やがて小さな岩場には、すみかを失ったセイウチの大群が押し寄せてきた。地球環境の変化が無ければ決して出会わなかっただろう、白くまとセイウチの家族。やがてこの動物たちは己の生死を賭けて向き合うことになるのだった……。