ローマ。若く生真面目なハイヤー運転手アントニオ(ルイジ・ロ・カーショ)は、空想好きな青年。彼の仕事は顧客が決めた道筋を旅し、車中での話に耳を傾け、彼らの人生を静かに見守ること。そして待ち時間、アントニオはSF小説を読む。ある晩、飛び出してきた少女リーザ(バルバラ・ヴァレンテ)を轢きそうになったアントニオは、彼女の母マリア(サンドラ・チェッカレッリ)と知り合う。マリアは一人で食料品店を経営し、女手ひとつで娘を育てていた。マリアに惹かれたアントニオはこの母娘を助けようと、彼女がサヴェーリオ(シルヴィオ・オルランド)への支払いに苦労しているのを知ると、彼女には何も言わず、サヴェーリオの運転手を買ってでる。だが、マリアはリーザとの生活を守ることに精一杯で、アントニオの好意を素直に喜べない。そしてアントニオは外国人労働者を搾取するサヴェーリオに、次第に耐えられなくなる。ある日、アントニオはミスを犯してサヴェーリオから解雇され、マリアはとうとう力尽きて、リーザを祖父母に引き渡す。それまで頑なに守っていたものを失ったとき、マリアの心にある変化が訪れるのだった。