土曜日報社社長北条は不思議な死をとげた。当局は船上からの自殺と断定した。娘の泰子は瀬川総務部長と婚約の間であった。社長が瀬川を信用していたのだ。事件直後日報社に魚住青年が現われ、生前社長の招きで編集部長になることになっていたという。瀬川はこれを拒絶した。魚住は社長の死因に疑惑をもち、一記者として入社し総務部の早苗という女事務員の協力を得た。町のボス梶源に目をつけた魚住は、次第に真相をつかみ、瀬川は梶源の手先であり、そこに土曜日報社がボスの御用新聞になりつつあることを知った。そのころ、居住者を追立て、そこへ競馬場を設置して甘い汁を吸おうとした悪らつな梶源のこんたんがあり、かつて市会議長でもあった北条だけが反対していたが、北条の死後急に市会を通過して、梶源の子分が居住者追立てを強行しはじめた現状を魚住は知り、新聞でバクロするために立上った。正義の社員が集った。そして夜間瀬川の知らぬ間にバクロ記事をのせた新聞が印刷され、町にバラまかれた。そのころは社長のあとをついで日報社女社長となっていた泰子も、ようやく瀬川の悪業を知り、瀬川との婚約を破棄した。泰子の心は魚住に傾いていたのだ、だが、早苗もまた魚住を慕っていた。新聞のバクロ記事によって町は沸き、大衆は闘争に立った。その日、早苗は泰子もまた魚住を愛していることを知って自分は身を引こうと、船にのって四国の故郷へ帰ることにした。はじめて早苗の気持を知った泰子は、魚住に「あの人を幸せにするのは貴男です」とあとを追わせる。出帆間ぎわ、魚住はようように間に合った。船で魚住と早苗は結ばれた。だが魚住を追うあやしい男があったのだ。その夜、早苗が一寸船室へ入ったとき、魚住はあやしげな男のため海中へ投げこまれた。が幸い、これを見ていた船員によって救われ、犯人もつかまった。犯人は梶源の子分八十川だったそしてかつて北条を海へ沈めたのも彼だったと自供した。梶源も、瀬川もあげられ、町は明るくなった。新聞社の社長室で、亡父の好きだった紅バラを胸にさした泰子は「私の夫は新聞だけ」と、さびしくほほえんだ。