立林えみは江ノ島に住む16歳の女の子。食品雑貨店を営む母佳代と会社員の兄邦彦の三人暮し。母も兄も嫌いではないが、「養われている」という心苦しさがえみの心に重くのしかかっているのだった。女子校の演劇部でシナリオを書いているえみは、男の同性愛をテーマにした新作が、高校生らしくないという理由でボツにされる。同性愛、売春、強姦、自殺というようなことに興味をもつえみには男女の恋愛の経験がなかった。そんな憂欝な気分を紛らわすかのように、タバコやシンナーに手を出し、好きでもない男にキスをさせるえみは毎晩のように「遺書」を書いた。絶望が続くある日、ジミーと呼ばれる少年脇坂肇の自殺を止めたえみは、彼の中に自分と共通する何かを感じる。そしていつしか恋に似たものを抱くようになっていた。数日後、偶然街でジミーと出会ったえみは、彼が買った精神安定剤を二人で飲んでしまう。そして、二人は心地よいけだるさの中で、愛の言葉を交わしたのだった。