新潟のしがない料亭に芸者君春として出ているよしみの許へ、前夫三好の妻田鶴子が陽一を引取りたいと訪れた。陽一は信州の女馬喰おとくに頂けてあったが、おとくは陽一を返す事を拒んだ。来年は学校へ上る可愛い陽一の為に、おとくは愛馬まで手放そうと決心していたのだ。その大賑わいの馬市で焚火に落ちた花火が爆発し、驚いた馬が陽一を下敷きにしてしまった。しかし、おとくを承知させようとしてはるばるやって来た医者の三好夫婦が居合わせた為、陽一は一命を取り止める事が出来た。三好は今は大きな病院を経営していて、陽一を東京の学校に上げて立派に育てようと言っている。おとくは遂に三好に陽一を引渡す事に決心した。三好の好意で芸者を退いたよしみも山へやってきて、悲しい最後の別れをした。三好の豪壮な邸宅に移った陽一は、田鶴子の歓待にも拘らず三好家に馴染まず、たまらなくなって家を飛び出した。その頃よしみは危篤だった。上野駅にさまよう陽一は偶然にもよしみの危篤に上京したおとくと対面し、二人は抱き合った。おとく、陽一、たけ、田鶴子に囲まれたよしみは強く陽一の手を握りしめた。始めて本当の母であると聞かされた陽一も、よしみの胸に泣き崩れた。よしみは嬉しそうに静かに最後の瞼を閉じた。