うどん屋リキが女房お勝と凉蔭寺の禅恵和尚の仲を疑い、白昼街頭で和尚を突きとばして尻餅をつかせた。そんなニュースが新聞のトップを飾るほど、この東海地方にあるツバメ町は平凡な町だ。町役場では福田町長、福住議長、山口、銀三らの議員たちが財政窮乏のツバメ町振興策を討議したのだが相も変らぬ堂々めぐり。そんな時福住のやっている料亭で地方事務所長の野沢が美人女中ふみ子を口説く苦しまぎれに“温泉境建設案”を口ばしったから、儲け話には目のない連中が早速膝をのり出した。禅恵和尚は寺附近の地代値上げを企んでいたので、借地人達はリキを代表にかつぎ上げ交渉に差し向けた。禅恵もさるものリキを酒と芸者で骨ぬきにし、寺の裏山大師山に赤い水が出ると出鱈目を言って町長や福住を口車に乗せ逆にリキを使って土地買占めにかけずり廻らせた。一方、反町長派の山口や銀三も負けじと大男満州虎を使って買い漁ったから地代はうなぎ上り。町長は新聞記者連を福住に招待して温泉源が発見されたと発表、その宴席で若い記者高石はふみ子をかばって酔漢を投げとばした。この温泉騒動に不明朗なものを嗅ぎつけた高石はくそ真面目に取材を続けたが欲のかたまりのような町民達にすっかりくたくた。そんな彼を知って始めて汚れた自分に気がついたふみ子はたまらなく口惜しかった。ところが、県の試験所が大師山の水を温泉と認めないという報告が入り、町は再び大混乱に陥った。町長は卒倒し、凉蔭寺には土地を売りそびれた農民達がおしかけたが、禅恵は泰然として土地は皆自分がひきとると宣言した。和尚の思惑通り事態は二転三転、代議士や県会議員の口添えで、試験所が方針を変更して再検査するから別の水を送れという通知があった。それは温泉として適格と認めたと同様だ。青菜に塩の町会議場は忽ちバンザイの声に沸き返った。