大江戸八百八町、泰平の世、だが禄をはなれた侍には住みにくい時代だった。飯田新次郎もそんな浪人の一人だった。新次郎はなれない博奕に手を出したため、借金が三十両にもなった。そこでやくざの辰は、旗本皆川頼母の家には金が沢山あり、頼母は月の半分しか家にいないことを新次郎に教え、押し込みを暗示した。その頃、江戸には般若の面をつけ、女ばかりを襲う辻斬りが出没していた。新次郎が、皆川家に忍び込んだとき、頼母の妻・綾が般若に襲われそうになっていた。新次郎は金を取るどころか、逆に綾を救った。そこで翌日も、金を奪いに出かけるが、今度は綾に発見される。突差に新次郎は綾を押し倒し犯した。綾は処女だった。それは頼母の性癖からだった。処女を奪われた綾は、新次郎なしではいられなくなり、彼に、頼母を殺し、金と自分を奪ってくれとそそのかした。夜空に花火が散る日、般若に化けた新次郎の頼母殺しの計画が進められた。しかし、本当の般若の女殺しは頼母だったのである。残忍な性癖と、女の性と、男の金への欲が、花火の夜、大江戸の空の下に散った。