昭和の初め、横浜港の近くにある本牧岬。その一角にあるホテルと称する洋館風の建物が並ぶ特飲街。人呼んで“チャブヤ”という。大和田アキが売られて来たのは「太陽ホテル」で、処女の彼女は七、八回も水揚げ式をやらされた。女たちの面倒をみている洋子は、アキを女アンマの福原とみの家に連れていった。とみに性技を教えてもらい、床上手になったアキは、次第に売れっ子になっていった。とみの使い走り兼SEX相手の太郎は、アキに惹かれ、アキも同じ気持ちでついに二人は関係を持つが、それがとみに知れてしまい、太郎は折檻される。その頃、同僚の君江はもっと金の儲かる満州へ売られていった。不況の荒海の中で二・二六事件が勃発、世情の不安は広がるばかりだった。やがて、本牧の噂を聞いた日本人たちの客の姿も多くなっていたある日、アキは佐久間と武藤の二人の男を相手にしたが、二人のしつこさに怒って、傷害事件を起こしてしまった……。昭和16年。チャブヤは廃止され、アキは敗戦の年の暮に他殺死体となって発見されたが、犯人は判らず仕舞いだった……。