パリに住む青年アレクサンドル(ヴァンサン・ペレーズ)は、フィアンセのロール(マリーヌ・デルテリム)との、どこか所帯じみた関係に嫌気がさしている。嵐の中、家主の孫娘ファンファン(ソフィー・マルソー)と運命的な出会いを果たし、自由奔放で冒険心に満ちた彼女に一目で恋に落ちる。ファンファンは性に関しては意外と古風なモラルの持ち主だった。アレクサンドルは彼女こそ生涯の恋人と心に誓い、彼女への情熱を保ち続けるために一切の肉体関係を断とうと決心、デートの終りにもおやすみのキスさえしなかった。いつしか愛が醒め、彼女を失うのが怖くて思いを告げることができない彼に対して、ファンファンのもどかしさはつのるばかり。やがて、この原因はロールにあると思ったファンファンは彼に怒りの言葉を投げつけて彼の前から去った。考えあぐねた末に、アレクサンドルはロールとの婚約を解消、ファンファンのアパルトマンの隣に部屋を借りる。そして彼女の留守中に部屋の壁をぶち抜き、マジックミラーをとりつけてしまう。何も知らず、鏡に話しかけ、笑いかけるファンファンと、それを熱っぽく見つめるアレクサンドル。鏡を挟んで、密やかで奇妙な同棲生活がはじまった。やがて壁の秘密を知ったファンファンは、ミラー越しにアレクサンドルを挑発するが、彼はあと一歩を踏み出せない。だが、お互いに一番大事な存在であることに気づき、ファンファンはミラーを叩き割り、ふたりは抱き合った。