むかしあるところに一人の老人と三人の息子がいた。長男は利口者で、次男も一人前だったが、三男のイワンは馬鹿者らしいといううわさである。ところが、ある日この一家に困ったことができた。というのは畑の麦がしきりに盗まれることだった。兄弟は麦畑の番をすることになったが、長男と次男はいつも怠けてばかりいて、番はもっぱらイワンに押しつけていた。そのうちイワンはやっと盗人をつかまえたが、それはお母さん馬だった。そしてイワンに、もし許してくれるなら二匹のりっぱな馬と傴僂の子馬をあげると約束して走り去った。やがて三匹の馬がイワンのものとなったが、これをみた二人の兄たちは早速悪知恵をしぼって二匹の馬を盗みだし市場に売りに行ってしまったので、おどろいたイワンは子馬にのって兄たちのあとを追った。途中「火の鳥」の羽を拾ったイワンはそれを捨てるようにいう子馬の忠告もきかずに市場へ行った。市場では見事な二匹の馬が評判となっており、王様が買いたいというが値段が折り合わず、ついに代償としてイワンは宮殿の馬小屋の長となることに決まる。ところが、いままでの馬小屋の長はこれを喜ばず、そのためイワンの持っている「火の鳥」の羽のことを王様に告げ口をし、イワンが王様のためなら「火の鳥」を生けどりにするといっていると話したので、王様は早速イワンに「火の鳥」を捕えてくるように命令した。困ったイワンは傴僂の子馬に相談し、その魔力で「火の鳥」を生けどって帰ってきた。当てのはずれた馬小屋の長は、こんどは遠い国のお姫様をイワンがつれてくると王様に話したので王様はまたもイワンに命令した。しかし、傴僂の子馬のふしぎな魔力は、ふたたび難題を解決してきれいなお姫様をつれてきたが、お姫様は王様が若返らなければいやだといってその方法を教えてくれた。それは大がめ一ぱいの水、熱湯、あつい牛乳に順に入るというのである。王様は困ったが、馬小屋の長はまたかん計を案出し、イワンを試験台にしようとたくらみ、子馬を袋の中に閉じこめてしまった。しかし絶体絶命のとき袋をかみ破った子馬が現われ大がめに一息ふきかけるとイワンはざんぶとその中へとびこんだ。一番から二番目へ、そして三番目のかめからがってきたイワンは目もさめるような美男子になっていた。王様も負けずにとびこんだが、それっきり上ってこず、イワンとお姫様は手をとりあって美しい宮殿へ入っていった。