ニューヨークで有名な南米航路汽船会社の社長リチャード・フィールド氏は温厚敏腕の実業家として聞こえた人物だった。彼が長年使っている秘書のディアヌ・ラヴィリング嬢は社長の無二のお気に入りであったばかりでなく、彼女の才腕は仕事の上でも無くてはならぬ重宝なものだった。ディアヌに対するリチャードの寵愛はついに純粋な愛にまで発展した。それには常に夫を離れて遊び回るリチャードの妻に罪もあった。リチャードは尋常に妻に離婚をはかったが妻はにべもなくこれを拒否した。リチャードは妻が考え直すまで止むなくディアヌと別れている事を決心し南米への旅行を進めた。南米行きの船中でディアヌはマイク・ブラドレーと遭遇した。彼はアルゼンチンに莫大な牧場を経営する青年だった。マイクのディアヌに対する恋は熱烈なものであった。マイクを憎からず思ったディアヌもついに折れて帰米の上リチャードに打ち明けてマイクと結婚する事を約し、ひとまずニューヨークに帰った。ディアヌは図らずもリチャードが妻との離婚を整え結婚指輪を用意して彼女を待っていることを知った。彼女のためにリチャードがその子供までも犠牲にした事を知ったディアヌは今更マイクとの恋を打ち明ける勇気もなく、リチャードと結婚の意図を固め、マイクには冷淡な手紙を送って忘れてくれと頼んだ。リチャードにとっては1年の幸福な結婚生活が続いた。しかしディアヌの心は常にマイクの事で満たされていた。結婚1年後偶然ニューヨークの路上で会ったマイクと彼女の間には変わらぬ愛情が胸に燃えていたが、ディアヌは愛する夫のため、再びマイクとは会わぬ決心を語った。マイクもリチャードの彼女への純真な愛を知り、潔く身を引こうとしたが、それを知ったリチャードは自分の幸福を捨て、若い2人の多幸を祈ってくれた。