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ステKINE値!!邦画図鑑 番外編1:コラム

日本映画名作セレクション

番外編1コラム 邦画図鑑の見どころ 文=佐藤忠男(映画評論家・日本映画大学学長)

リストの一覧表を見てアッと驚いた。これはつまり、日本映画が各社の撮影所でつくられていた黄金時代の名作、ヒット作のそうまくりではないか。なんとなんと、探しあぐねていた、あの作品も、この作品も、なんでも簡単に手に入るということだ。

撮影所にはそれぞれの得意の分野があって、それにふさわしいスターが育成され、技術が練り上げられ、作家や監督が工夫を凝らしたのだ。似たような作品の繰り返しが洗練を生み、ヒット作が生まれる。そうして出来た撮影所の力の全体を活用して芸術品に高めたのがいわゆる巨匠達なのだ。

だからみんな一体で、大衆的なヒット作なしには芸術的名作もあり得なかった。スターは一定の調子を保ったシリーズ作品でこそ、しっかりとオーラや風格を身につける。そうして育ったスターたちをしごきにしごいて、演技賞受賞者にまで磨きあげてゆくのが、つまりは巨匠の役割りだった。

撮影所時代のフアンは、そうした撮影所の在り方の全体を楽しんだのであって、一人のスターやひとりの監督だけをひいきにしていたわけでは必ずしもないのである。そおいう、日本映画の良き日が、この名作セレクションには再現されている。目出度い。祝いたい。