“映画の学校”のガイドを読むその前に/後に、知っておいて損はナイ!映画業界の仕事についておさらいしましょう。
映画作りのスタート地点。監督が自ら企画を持ち込むこともあるが、ほとんどの場合はプロデューサーが観客のターゲット層や公開時期、公開規模などを考慮しつつテーマを選定していく。映画全体を統轄するプロデューサーはこの後、製作、劇場公開、2次利用、3次利用までの全責任を負うことが多い。 最近ではオリジナルの企画よりも小説やマンガ、TVドラマなどの映画化が目立つ。テーマの決定後、脚本作り、キャスティング、資金集めにとりかかる。この時、一社の出資で映画製作を行うことは少なく、テレビ局、出版社、広告代理店、ソフトメーカー、レコード会社などからも出資を募り、製作委員会を組むケースが多い。そのため、映画製作を直接の業務としない会社であっても映像担当部署があり、専門知識のある人材を採用するケースがある。
キャスティングと資金調達のメドがついたところでスタッフ編成や撮影場所が決められ、撮影が始まる。現場では、監督、撮影、照明、録音、衣裳、美術、編集などの各部署にチーフとアシスタントのスタッフ数名ずつが参加する。こうしたスタッフになるためには、見習いから現場に入ってフリーで活動をするか、制作会社へ所属することになる。映画・映像学校で学ぶことを通じて人脈を広げ、就職のチャンスを得ることも。 撮影が終わるとポストプロダクション作業が行われ、さらに外国映画の場合は字幕制作や吹き替え版を制作。その後、映画倫理委員会の審査を経て上映に至る。
配給の仕事とは、出来上がった作品を観客に届けること。邦画の場合は企画の段階から配給会社が決定していることが多く、作品の規模や傾向にあわせてスクリーン数や形態を想定し、劇場に上映交渉をする劇場営業を行う。全国公開の場合は、地方の劇場までの展開までも計画する。
洋画の場合は、主に海外の映画祭のマーケットなどでの版権の買い付けから始まる。その後は邦画の場合と同じく劇場営業を行うが、海外資本の大手配給会社の場合は自主製作の作品を配給するため買い付け業務はない。現在、日本で外国映画を配給する会社はハリウッド・メジャーと呼ばれるアメリカの大手スタジオの日本支社と、インディペンデントと呼ばれる日本資本の外国映画輸入配給会社とに分かれるが、インディペンデント系の会社の数は大小合わせて100社以上にものぼる。 各配給会社は世界中から情報を集めて買い付け作品を検討するが、外国映画の配給権(劇場で上映する権利だけでなく、テレビ放映権、DVD化権を含むオールライツである場合が多い)の獲得にかかる費用の高騰を受け、買い付けにおいても“製作委員会”のような方式をとり、配給会社とソフトメーカーなどが共同出資するというのが最近の傾向だ。
劇場決定後、公開に向けて次は宣伝を開始する。外国映画の場合は邦題を決め、宣伝方針に沿ってメインビジュアルやキャッチコピーを決めていく。宣伝業務にはマスコミに記事や情報を露出していくパブリシティと、有料広告での露出展開をしていくアドバタイジングがある。パブリシティの仕事は数百単位の媒体(新聞、雑誌、番組、ウェブ等)への対応が必要となるため、この業務だけを宣伝会社に委託することも多い。 委託を受けた宣伝会社は配給会社と提携して効率よくパブ展開をしていく。配給会社や宣伝会社で経験を積んだ後、フリーで宣伝業務を担当、活躍する宣伝マンも。
観客にとって最も身近な場所である劇場(興行)には、上映作品の決定、映写、売り上げの管理、接客などの仕事がある。古くから存在する興行会社の場合は、貸しビル業やアミューズメント施設の運営など、劇場経営以外の部門で売り上げを確保している場合も多い。劇場で働くスタッフの大部分はアルバイトやパートタイマーなので、働きながら業界の仕組みや観客の動向を知り、就職に役立てることも可能だ。
劇場での上映が終了しても映画ビジネスは終わらない。配給会社は上映権だけでなく、ビデオ・DVD化権(2次利用)、テレビ放映権(3次利用)も買っていることが多いため、版権や放映権を売却して収益を上げる。また、日本映画の場合は、オールライツやリメイク権など、海外への権利販売も視野に入ってくる。